大阪都心のオフィスビル利用状況についてのオリジナル調査結果

不動産鑑定士 深澤俊男

1.はじめに

 ここ数年における大型オフィスビル供給により、大阪市中央区などに所在していた企業の梅田地区等への移転などが見られ、また、今後も続く大型開発により中央区ビジネスエリアからの企業流出によるさらなる空洞化が懸念されています。
 しかし、依然、御堂筋などへの関心の高さがある一方、御堂筋を中心とした中央区ビジネスエリアのオフィスビル市場の実状がよくわからないという声も聞かれます。
 そこで、特に注目度の高い、御堂筋・堺筋・四つ橋筋といった大通り沿いのエリアにつき、「都心オフィスビル利用状況観測調査」を実施いたしましたので、その概要を以下に記載させていただきます。

2.「都心オフィスビル利用状況観測調査(2012年9月期)」の結果から

 設定した「御堂筋沿いビジネスエリアなど(※1参照)」に所在するオフィスビル(※2参照)のフロア稼働率(※3参照)は、御堂筋沿い[MC−T]地区、同[MC−U]地区を比較すると2011年以降は「北高南低」状況が続いています(【図1】参照、以下同)。ただし、2012年以降においては共にやや上昇傾向を示しています。また、堺筋沿い[SC−T]地区はほぼ横ばい傾向、四つ橋筋沿い[YC−T]地区はやや上昇傾向を示しています。なお、[MC−U]地区を除く3地区については、直近2年間においていずれも90%以上の水準を維持しています(同)。

(※1)

御堂筋沿いビジネスエリアなど:■参考資料(都心地図)のうち、今回は以下の4地区を調査対象とした。[MC−T]地区、[MC−U]地区、[SC−T]地区及び[YC−T]地区(いずれも同参考資料参照)

(※2) オフィスビル:地上4階建以上かつ主たる用途が事務所であるビル。
(※3) フロア稼働率:1フロアを1単位とし、外観調査などにより入居事業者等が確認できれば稼働状態とみなす。なお、地下階、及び地上階のうち店舗専用フロアなどは調査対象外とする。



【図2】、【図3】によると、2012年9月時点において、御堂筋沿い[MC−T]地区及び同[MC−U]地区のビル別フロア稼働率を比較すると、[MC−T]地区は100%フロア稼働ビルが同地区全体棟数のうち75%(棟数割合、以下同)であるのに対し、[MC−U]地区は54%に留まります。また、[MC−T]地区は80%未満フロア稼働ビルが同地区全体棟数のうち8%であるのに対し、[MC−U]地区は23%存在します。

【図2】御堂筋沿い[MC−T]地区における、フロア稼働率別のビル棟数割合(2012年9月時点)


【図3】御堂筋沿い[MC−U]地区における、フロア稼働率別のビル棟数割合(2012年9月時点)

3.「都心オフィスビル利用状況観測調査(2012年6月期)」の参考調査結果から

 2の「都心オフィスビル利用状況観測調査(2012年9月期)」に先立ち行われた、「都心オフィスビル利用状況観測調査(2012年6月期)」において、2011年末から2012年6月末までの6か月間において、「御堂筋沿いビジネスエリア[MC−T]地区」に所在するオフィスビルへ移転してきた事業者のうち移転前所在地が判明した20サンプルを基にその特性を分析しました(以下の【図4】〜【図9】参照)。
 各項目における特徴として、業種についてはサービス業が最も多く約3分の2、本社所在地については東京23区が最も多く約3分の2、非上場企業が9割、2000年以降設立した企業等が約4割を占めます。また、利用フロア数については1フロア未満が85%を占め、移転前所在地は大阪市中央区が半数余りを占めています。なお、参考として、移転前所在地が中央区であったサンプルのうち、近傍地(御堂筋を含む堺筋以西の船場地区を中心としたエリア)からの移転が約8割を占めていることを付記いたします。






■参考資料
  株式会社アークス不動産コンサルティング「都心オフィスビル利用状況観測調査〜
   御堂筋ビジネスエリアなど(2012年9月期)〜」2012年11月
  株式会社アークス不動産コンサルティング「都心オフィスビル利用状況観測調査〜
   御堂筋ビジネスエリア(2012年6月期)〜」2012年7月

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以 上

平成24年12月号(財)大阪府宅地建物取引主任者センターメールマガジン執筆