主要都市の高度利用地地価動向報告     
             〜地価LOOKレポート〜の最新結果


不動産鑑定士  深澤 俊男

1. はじめに

 国土交通省は、平成25年11月26日に、平成25年第3四半期主要都市の高度利用地地価動向報告〜地価LOOKレポート〜の結果を公表しました。
 この主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)とは、主要都市の地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等の地区について、四半期毎に地価動向を把握することにより先行的な地価動向を明らかにするもので、平成19年第4四半期から継続して公表されています。調査内容は、鑑定評価員(不動産鑑定士)が調査対象地区の不動産市場の動向に関する情報を収集するとともに、不動産鑑定評価に準じた方法によって地価動向を把握し、その結果を国土交通省において集約します。また、各地区の不動産関連企業、金融機関等の地元不動産関係者にヒアリングを行った結果が掲載されています。
 対象地区は、三大都市圏、地方中心都市等において特に地価動向を把握する必要性の高い地区となっており、現在は東京圏65地区、大阪圏39地区、名古屋圏14地区、地方中心都市等32地区の合計150地区です。これを用途別に分けますと、高層住宅棟により高度利用されている住宅系地区が44地区、店舗、事務所等が高度に集積している商業系地区が106地区設定されています。
 なお、従来から実施されている、地価公示や都道府県地価調査に比べ、その対象範囲は限定的で、対象地点は少ないですが、地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等のみを抽出・選定し、また速報性を重視したもので、その内容や役割がやや異なっています(【表1】参照)。

【表1】地価公示・都道府県地価調査と地価LOOKレポートの制度比較表(一部)
※クリックすると拡大します。

2. 全国の地価動向

 国土交通省HPによると、以下のようにまとめられています。
 平成25年第3四半期(7/1〜10/1)の主要都市・高度利用地150地区における地価動向は、上昇が107地区(前回99地区)、横ばいが34地区(前回41地区)、下落が9地区(前回10地区)となり、上昇地区が8地区増え、全体の7割を超えました。
 この上昇地区が全体の7割を超えた理由としては、不動産投資意欲の回復、住宅需要の増加等により三大都市圏の大半の地区において引き続き上昇となったことのほか、京都市や仙台市の利便性の高い地区等における需要増により上昇に転じた地区が生じたことによります。
 このように、今回の地価動向は前回に引続き三大都市圏の大半の地区で上昇(0〜3%)を示すなど、従来の下落・横ばい基調から上昇基調への転換が引続き広範に見られます(【表2】参照)。

【表2】全地区の上昇・横ばい・下落の地区数一覧表 ※クリックすると拡大します。

 

3. 圏域別・用途別の地価動向

 国土交通省HPによると、以下のようにまとめられています。
 まず、圏域別の地価動向については、三大都市圏(118地区)のうち東京圏(65地区)では上昇地区が46地区(前回は45地区)、横ばい地区が15地区(前回16地区9、下落地区が4地区(前回4地区)と約7割が上昇となっています。また、大阪圏(39地区)では、上昇地区が28地区(前回25地区)、横ばい地区が11地区(前回14地区)と約7割が上昇となっており、名古屋圏(14地区)では、前回に引き続き、全ての地区で上昇を示しています。
 なお、大阪圏の上昇・横ばい・下落の地区数一覧を下記の【表3】に示しております。

【表3】大阪圏の上昇・横ばい・下落の地区数一覧表 ※クリックすると拡大します。
 
 
 次に、用途別の地価動向については、住宅系地区(44地区)では、上昇地区が35地区(前回31地区)、横ばい地区が7地区(前回11地区)、下落地区が2地区(前回2地区)と約8割が上昇となっています。また、商業系地区(106地区)では、上昇地区が72地区(前回68地区)、横ばい地区が27地区(前回30地区)、下落地区が7地区(前回8地区)と約3分の2が上昇となっています。

4. 大阪府内の地価動向

 大阪府内には以下の19地区が設定されています(【表4】参照)。

【表4】各地区の位置、利用状況等 ※クリックすると拡大します。
 
   これら大阪府内の19地区における最近の傾向は、平成24年第4四半期においては上昇地区が9地区、横ばい地区が7地区、そして下落地区が2地区ありましたが、平成25年に入ってからは下落地区はなくなり、直近の平成25年第3四半期においては、上昇地区が17地区、横ばい地区が2地区で下落地区はなしと上昇傾向が顕著にみられました(【表5】参照)。

【表5】地区毎の総合評価(変動率)推移 ※クリックすると拡大します。
 
 
 大阪府内の19地区における取引価格等の市況のトレンドを示したものが下記の【表6】です。ここでは、A.取引価格:対象地区の不動産(土地又は土地・建物の複合不動産の土地に相当する部分)の取引価格、B.取引利回り:対象地区の不動産(土地又は土地・建物の複合不動産)の取引に関する利回り(純収益を取引価格で除した値)、C.取引件数:対象地区の不動産(土地又は土地建物の複合不動産)の取引件数、D.投資用不動産の供給:投資用不動産(賃貸収益を目的とする貸しオフィスや貸しマンションなど)の供給件数、E.オフィス賃料:商業系地区におけるオフィス賃料、F.店舗賃料:商業系地区における店舗賃料、G.マンション分譲価格:住宅系地区における新築マンションの分譲価格、H.マンション賃料:住宅系地区における賃貸マンションの賃料の8項目がその対象です。A.取引価格は2地区を除いて上昇傾向を、B.取引利回りは4地区を除いて低下傾向を、C.取引件数は4地区は除いて下落傾向を示しています。なお、D.投資用不動産の供給については、19地区のいずれも横ばいとなっています。次に、オフィス賃料については、4地区を除いた15地区が対象で、そのうち横ばいが9地区、下落が6地区、店舗賃料についても、対象は15地区で、そのうち全てが横ばいを示しており、オフィス賃料と店舗賃料の違いが表れています。一方、G.マンション分譲価格は対象が4地区のうち、上昇が吹田市江坂周辺の1地区のみで、他の3地区は横ばいを、H.マンション賃料は対象の4地区全てが横ばいを示しています。

【表6】大阪府内における地価動向報告(H25.7.1〜H25.10.1) ※クリックすると拡大します。
 

5.その他の地価LOOKレポートの特長


 この主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)には、これを評価した鑑定評価員のコメント及び主な項目の概要が追記されていることや、ヒアリングに応じて頂いた地元不動産業者の声の一例も一部掲載されていることから、これまでの公的評価との違いとして、取引現場のさらに詳細な状況を反映した定性的な観点での動向が分かり易くなっていることが特長として挙げられます。なお、これらはインターネットで公開されており、不動産事業に関わる方々のみならず、広く一般の人々も閲覧可能で、冒頭の通り、限定された地区ではありますが、四半期毎という頻度で公表されることから、これまで以上に高度利用地に関しての地価動向をいち早く把握することが可能です。

(参考資料)
   国土交通省HP 土地水資源局 地価調査課 発表資料より

  以上

平成25年12月号(一財)大阪府宅地建物取引主任者センターメールマガジン執筆分