住宅ローン控除とすまい給付金(住宅取得者向け現金給付制度)の概要について



税理士 櫻井 圭一

 
1. 住宅ローン控除の概要

 個人が銀行借入金等により「住宅の取得等」をした場合において一定の要件を満たすときは、所得税の額から「住宅借入金等特別控除額」が控除されます(一定の場合には住民税の額からも控除されます)。
以下、簡単に概要をまとめます。

(1)対象者
 対象者については、次の2つの要件を満たすことが必要です。

 @「居住者」であること。
  従って、「非居住者」が住宅の取得等をした場合には適用されません。
 A住宅ローン控除を受ける年分の合計所得金額が3000万円以下である者。

(2)「住宅の取得等」
 次の@〜Cに該当する居住用家屋の取得等(贈与を除く)が対象です。住宅ローン控除を受けようとする者がその居住用家屋の所有権を有していることが必要です。

 @新築されたもの
 A居住用家屋で建築後使用されたことのないもの
 B中古住宅の場合
  従来はアの要件だけでしたが、平成26年改正でイの要件が追加されました。

 ア 耐震住宅
  取得の日前一定期間内に耐震基準(※1)又は経過年数基準(※2)に適合する
  ことが証明されたもの
  (※1)建築基準法施行令に定める地震に対する安全性に係る基準
  (※2)取得の日以前20年以内(耐火建築物は25年以内)に建築されたもの

 イ ア以外の中古住宅(要耐震改修住宅)
  平成26年4月1日以後に下記a,bの要件を満たす要耐震改修住宅の取得をし、
  自己の居住の用に供する場合に適用されます。

  a 要耐震改修住宅の取得の日までに下記の申請等をすること。
   取得の日以後にその要耐震改修住宅の耐震改修を行うことについての
   建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づく申請等
  b 居住の用に供する日(※3)までに下記の証明がされること
   aに基づく耐震改修により耐震基準に適合することとなつたことについて
   の証明
     (※3)その取得の日から6ケ月以内の日に限ります。

 C増改築等の場合
  住宅ローン控除を受けようとする者が所有している自己の居住の用に供する
 家屋についての一定の増改築等であること。
  たとえば、親が所有している住宅に子が借入金をして増改築したような
 ケースは対象外です。

(3)居住要件
 次の2つが要件です。

 @住宅の取得等の日から6月以内にその者の居住の用に供すること。
 A住宅ローン控除を受けようとする年の12月31日まで引き続きその居住の用に
  供していること。
  (ただし、転勤等により一時的に居住しなかったような場合には例外があり  ます。)

(4)床面積要件
 次の2つが要件です。

 @床面積が50u以上であるもの。
 A床面積の1/2以上に相当する部分が専ら居住の用に供されること。

(5)一定の住宅借入金等の金額を有すること
 契約における償還期間や賦払機関が10年以上の銀行借入金等であることが必要です。

(6)取得等の相手先
 新築や増改築等の場合は、取得等の相手先に制限はありませんが、中古住宅については、取得時においてその者と生計を一にしており取得後も引き続きその者と生計を一にする次に掲げる者からの取得については住宅ローン控除の対象外です。

 @その者の配偶者
 Aその者の親族
 Bその者と事実婚関係にある者
 C@〜B以外の者でその者から受ける金銭等によって生計を維持しているもの
 D@〜Cに掲げる者と生計を一にするこれらの親族

 制限のある相手先はいずれも「個人」ですので、たとえば同族会社からその同族会社の役員が中古住宅を購入したような場合には制限はありません。

(7)他の特例との併用

 @居住用財産の3000万円特別控除や買換え等の課税の特例との併用
 居住の用に供した年を含みその前後2年分について、住宅ローン控除を受けようとする居住用財産以外について、居住用財産の3000万円特別控除や買換え等の課税の特例の適用を受けていないことが必要です。
 たとえば、平成26年分の所得税の計算上、ある居住用財産について住宅ローン控除を受けようとする場合には、他の居住用財産について平成24年分〜平成28年分の所得税において上記の特例の適用を受けないことが必要です。
 ただし、居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例との併用は可能です。

 A認定長期優良住宅の特別控除との併用
 居住の用に供した年とその翌年について認定長期優良住宅の特別控除の適用を受けていないこと。

(8)控除額
 住宅の態様に応じて次のとおり控除額が定められています。なお、所得税において控除しきれない部分については、一部翌年の住民税からも控除されることがあります。

 @一般住宅

居住年

借入限度額

控除率

各年の控除限度額

最大控除額

H25 2,000万円

1.0%

20万円

200万円

H26−H29 特定取得以外
特定取得(*2)

4,000万円

40万円

400万円

(*1)一般の住宅とは、下記ロの認定住宅以外の住宅をいいます。
(*2)特定取得
 居住者の住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額が、消費税率8%又は10%により課されるべき消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額である場合の当該住宅の取得等をいいます。

 A認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅

居住年

借入限度額

控除率

各年の控除
限度額

最大
控除額

H25

3,000万円

1.0%

30万円

300万円

H26−H29 特定取得以外
特定取得

5,000万円

50万円

500万円



(9)適用関係
 平成11年1月1日から平成29年12月31日までの間に居住の用に供した場合に適用されます。

(10)手続
 居住の用に供した年分の所得税の確定申告書と次の書類を提出する必要があります。
  @住民票の写し
  A不動産の登記事項証明書
  B売買(請負)契約書の写し
  C源泉徴収票(給与所得者の場合)
  Dその他一定の書類
 なお、給与所得者は2年目以降年末調整で控除を受けることができます。



2.

すまい給付金(住宅取得者向け現金給付制度)の概要

 平成26年4月1日より消費税率が5%から8%に引き上げられました。住宅を購入する場合、建物部分については消費税の課税取引となりますので、消費税率が引き上げられると一般的には消費者負担も増大することになります。
 「すまい給付金」は、このような消費者の負担を一定程度緩和するために設けられた制度で、「好循環実現のための経済対策」(2013年12月5日閣議決定)に基づいた2013年度の補正予算において執行されます。

(1)給付対象者
 次の@〜Dのすべてを満たす者が給付対象者です。

 @消費税率8%で住宅を取得する者で平成27年9月末までに引渡し・入居が完了する者
  ただし、今後消費税率が引き上げられた場合には、消費税率10%で住宅を取得した者も対象となる見込です。

 Aその取得住宅の登記上の持分を保有する者
  共有者がいる場合はそれぞれの共有者が対象者です。

 Bその取得住宅に居住する者

 C都道府県民税の所得割額が9万3800円以下の者

 ただし、神奈川県内に居住する者については、9万4300円以下の者が対象です。

 また、同一年中の引渡しであっても、引渡し日により判定対象とする都道府県民税の課税年度が異なりますので注意してください。

  □住宅の引渡し日と判定対象となる都道府県民税の課税年度

引渡し日 平成26年 平成27年 平成28年 平成29
4月〜6月 7月〜12月 1月〜6月 7月〜12月 1月〜6月 7月〜12月 1月〜6月 7月〜12月
課税年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度 平成29年


 D年齢要件
  住宅ローンを有する者については年齢制限はありませんが、住宅ローンを
 有しない者については年齢50歳以上の者が対象です。

(2)給付額
  給付額は下記の算式により計算した金額で、共有者ごとに計算します。

給付額= 給付基礎額 × 共有者ごとの持分割合


□給付基礎額

都道府県民税の所得割額
(     )内の金額は神奈川県の場合


以下

給付基礎額

68,900円

                      (69,300円)
300,000円

68,900円
83,900円
(69,300円)
(84,400円)

200,000円

83,900円           
93,800円
(84,400円) 
(94,300円)

100,000円

(3)対象住宅
下記の要件を満たす住宅が対象です。

 @床面積
  50u以上

 A施工中の検査
  新築住宅(※1)については施工中等、中古住宅(※2)については売買時等に第三者の
 現場検査を受け一定の品質が確認された次の要件に該当する住宅

区分 対象住宅
新築住宅 住宅ローン(※3)の利用がある場合

次のア〜ウのいずれかに該当する住宅
ア 住宅瑕疵担保責任保険へ加入した住宅
イ 建設住宅性能表示を利用した住宅
ウ 住宅瑕疵担保責任保険法人により保険と同等の検査が実施された住宅

住宅ローン(※3)の利用がない場合

次のアイのいずれにも該当する住宅
ア 上記ア〜ウのいずれかに該当する住宅
イ 住宅金融支援機構のフラット35Sと同等の基準を満たす住宅

次のいずれかに該当する住宅
・耐震性に優れた住宅(等級2)
・省エネルギー性に優れた住宅(等級4)
・バリアフリー性に優れた住宅(等級3)
・耐久性・可変性に優れた住宅(劣化対策等級3、維持管理対策等級2等)

中古住宅

次のア〜ウのいずれかに該当する住宅
ア 既存住宅売買瑕疵保険へ加入した住宅
イ 建設住宅性能表示を利用した住宅(耐震等級1級以上のもの)
ウ 建設後10年以内であって、新築時に、住宅瑕疵担保責任保険へ加入している住宅又は建設住宅性能表示を利用している住宅

(※1)新築住宅
 人の居住の用に供したことのない住宅であって工事完了から1年以内のもの。
 住宅瑕疵担保履行法における「新築住宅」の定義と同じです)。
(※2)中古住宅
 新築住宅以外の住宅。
 ただし、売主が宅地建物取引業者であるものに限られます。
(※3)住宅ローン
 次のいずれにも該当する住宅ローンをいいます。
 ・借入目的が住宅ローン借入者が居住する住宅の取得であること。
 ・償還期間が5年以上の借入であること。
 ・金融機関等からの借入であること。

(4)手続
 住宅の引渡しから住宅取得者1年以内に申請することが必要ですが、住宅事業者等による代行も可能です。

 必要書類、申請先等の詳細につきましては「すまい給付金」のホームページhttp://sumai-kyufu.jp/をご参照ください。

(一財)大阪府宅地建物取引主任者センターメールマガジン平成26年8月号執筆分