平成24年度税制改正のポイント(住宅・不動産関連税制)

税理士 松田 昭久


1.はじめに

 平成24年度税制改正においては、平成22年度・平成23年度税制改正から税制抜本改革へと通じる、税制全体及び各税目についての基本的な考え方に立脚しつつ、特に喫緊の対応を要する、@新成長戦略実現に向けた税制措置、A税制の公平性確保と課税の適正化に向けた取組み、B平成23年度改正における積残し事項への対応、を中心に改正が行われました。
 今回は、平成24年度税制改正の中で、住宅や不動産に関係する項目について、変更点や留意点について説明します。  




2.土地住宅税制の改正

(1)認定省エネ住宅ローン控除の創設
 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、低炭素まちづくり促進法(仮称)の制定に伴い、同法に規定する認定省エネルギー建築物(仮称)のうち一定の住宅(以下「認定住宅」といいます。)の新築又は建築後使用されたことのない認定住宅の取得をして平成24年又は平成25年に居住の用に供した場合における住宅借入金等の年末残高の限度額及び控除率は、次のとおりとします(認定長期優良住宅に係る措置と同様の措置)。

居住年

控除期間

住宅借入金等の年末残高の限度額

控除率

平成24年

10年間

4,000万円

1%

平成25年

10年間

3,000万円

1%



(2)認定長期優良住宅普及促進税制の延長

認定長期優良住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除

税額控除額の上限額を50万円(改正前:100万円)に引き下げた上、その適用期限を平成25年12月31日まで2年延長されました。

特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置

戸建て住宅に係る所有権の移転登記に対する軽減税率を1,000分の2(改正前1,000分の1)に引き上げた上、その適用期限を平成26年3月31日まで2年延長されました。

認定長期優良住宅の新築に係る不動産取得税

課税標準の特例措置の適用期限を平成26年3月31日まで2年延長されました。

認定長期優良住宅の新築に係る固定資産税の減額措置

特例措置の適用期限を平成26年3月31日まで2年延長されました。



(3)特定居住用財産の買換えの特例の縮減・延長

 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例について、譲渡資産の譲渡対価に係る要件を1.5億円(改正前:2億円)に引き下げた上、その適用期限を平成25年12月31日までの譲渡に2年延長されました。


(4)居住用財産の買換え等の場合及び特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除の延長

 適用期限を平成25年12月31日までの譲渡に2年延長されました。


(5)特定事業用資産の買換えの特例の縮減・延長

 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例における長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物、機械装置等への買換えについて、次の買換資産の見直しを行った上、その適用期限を平成26年12月31日までの譲渡に3年延長されました。
 土地等の範囲を事務所等の一定の建築物等の敷地の用に供されているもののうちその面積が300u以上のものに限定されました。



(6)その他の土地譲渡の譲渡所得の特例

 特定の民間住宅地造成事業のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除について、適用対象から一団の住宅建設に関する事業を除外した上、その適用期限を平成26年12月31日までの譲渡に3年延長されました。


(7)不動産取得税の軽減税率の延長

@  宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準を価格の2分の1とする特例措置の適用期限を平成27年3月31日までの取得に3年延長されました。
A  住宅及び土地の取得に係る不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置の適用期限を平成27年3月31日までの取得に3年延長されました。


(8)土地に係る固定資産税の負担調整措置の延長・廃止

@  固定資産税等(土地)の負担調整措置は、原則として、現行の仕組みを3年延長されました。また、住宅用地特例(特例割合1/6等)も現行を継続されました。ただし、不公平是正の観点から、住宅用地に係る据置特例を経過的な措置を講じた上で平成26年度に廃止されます。
A  新築住宅に係る固定資産税の軽減措置を平成26年3月31日までの新築に2年間延長されました。(固定資産税額の2分の1を3年間減額、中高層は2分の1を5年間減額)


3.贈与税の改正


(1)直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税

 非課税限度額(改正前1,000万円)を次のとおり拡充されました。


@

省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅用家屋の場合

(a) 平成24年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者

1,500万円

(b) 平成25年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者

1,200万円

(c) 平成26年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者

1,000万円

 
A 上記@以外の住宅用家屋の場合
(a) 平成24年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者

1,000万円

(b)

平成25年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者  700万円
(c) 平成26年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者

 500万円


(2)住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例

 適用期限を平成26年3月31日までの贈与に3年延長されました。



4.おわりに

 現在「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」が国会に提出され、審議されています。
 法律案の内容は、「平成26年4月から消費税率を5%から8%に引上げ(平成27年10月から消費税率10%に引き上げ)」、「平成27年から開始する相続に係る相続税の基礎控除の引下げ「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」⇒「3,000万円+600万円×法定相続人数」、相続税の税率構造の見直しによる最高税率の50%⇒55%の引き上げ」などです。
 不動産業界に及ぼす影響が、非常に大きな改正案の内容となっています。今後の審議内容を注目していきたいところです。

以上