平成26年度税制改正のポイント(住宅・不動産関連税制について)



税理士 秦  雅 彦

 
1. はじめに

 平成26年度税制改正は、「デフレ脱却・経済再生」の実現、税制抜本改革の着実な実施、震災からの復興支援等の観点から、税制の改正が行われました。
 今回は、平成26年度税制改正のうち住宅・不動産にかかわる税制を中心に、改正点を説明いたします。

2. 土地住宅税制の改正

(1) 住宅ローン控除の拡充
 住宅ローン控除の適用を受けることができる中古住宅は、現行では耐火建築物は築25年以内、耐火建築物以外は築20年以内のもの及び一定の耐震基準を満たすものに限られていますが、改正後は、以下の要件を満たす場合は、住宅ローン控除の適用を受けることができます。
耐震基準、経過年数基準に適合しない中古住宅(要耐震改修住宅)を取得する
取得日までに、耐震改修工事の申請を行う
居住日までに、耐震改修工事により耐震基準に適合する証明を受ける
 この改正は、平成26年4月1日以後に要耐震改修住宅を取得し、自己の居住の用に供する場合について適用されます。

(2) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算等の適用期限の延長
 居住用財産を買換えた場合に譲渡損失が生じたときは、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
 この適用期限が、平成27年12月31日まで2年間延長されました。

(3) 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算等の適用期限の延長
 住宅ローンのある居住用財産を、住宅ローンの債務残高を下回る価額で売却して譲渡損失が生じたときは、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
 この適用期限が、平成27年12月31日まで2年間延長されました。

(4) 特定居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例の縮減と延長
 居住用財産を買換えた場合においては、一定の要件のもと、譲渡した居住用財産の譲渡益に対する課税を繰り延べる、特定の居住用財産の買換えの特例があります。
 この特例について、譲渡資産の譲渡対価の要件が1億円(現行1億5千万円)に引き下げられた上で、適用期限が、平成27年12月31日まで2年間延長されました。  
 この改正は、平成26年1月1日以後に行う居住用財産の譲渡について適用されます。

(5) 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税特例の適用対象の追加
父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する家屋の新築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、住宅取得等資金のうち一定金額(省エネ等住宅:1,000万円、それ以外の住宅:500万円)について贈与税が非課税となります。
 この適用対象となる既存住宅用家屋の範囲に、上記(1)の要件を満たす既存住宅用家屋が加わりました。
 この改正は、平成26年4月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。

(6) 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例の適用対象の追加
 親から住宅取得等資金の贈与を受けた20歳以上(贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者に限られます。)の子が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する家屋の新築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、相続時精算課税を選択することができます。
 この適用対象となる既存住宅用家屋の範囲に、上記(1)の要件を満たす既存住宅用家屋が加わりました。
 この改正は、平成26年4月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。

(7) 相続財産である土地等を譲渡した場合の取得費の特例の見直し
 相続により取得した土地、建物、株式などを、その相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合には、相続税額のうち一定の金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。
 現行では、取得費に加算する相続税の額は、土地等を譲渡した人に係る相続税額のうち、その者が相続や遺贈で取得した「すべての土地等に対応する額」とされていますが、改正後は、土地等を譲渡した人に係る相続税額のうち、その者が「譲渡した土地等に対応する額」に縮減されます。
 この改正は、平成27年1月1日以後に開始する相続又は遺贈により取得した資産を譲渡する場合に適用されます。

(8) 登録免許税の特例の拡充と延長
@ 宅地建物取引業者による増改築をした中古住宅の登録免許税の軽減措置
 個人が、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に、宅地建物取引業者により増改築が行われた住宅用家屋を取得した場合における、その住宅用家屋に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の税率については、1/1000(一般住宅3/1000、本則20/1000)に軽減されます。
A 特定認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、適用期限が、平成28年3月31日まで2年間延長されました。

(9) 不動産取得税の特例措置の拡充と延長
@ 新耐震基準に適合しない中古住宅を購入し、入居前に新耐震基準に適合するための改修を実施した場合には、既存住宅の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例措置(最大1,200万円控除)が適用されることになりました。
A 新築住宅特例適用土地に係る軽減措置の住宅新築期限の特例措置の延長
 土地を取得して住宅を新築する場合、土地に係る不動産取得税の住宅用土地の軽減措置(床面積の2倍(200uを限度)相当額の減額)を受けるには、原則として土地取得から2年以内に住宅を新築する必要があります。現行では、この「2年以内」を「3年以内」に緩和する措置がとられており、この特例措置が平成28年3月31日まで2年間延長されました。
B 新築住宅を宅地建物取引業者が取得したものとみなす期限の特例措置の延長
 宅地建物取引業者が新築した住宅について、新築した日から6カ月を経過するとその事業者が取得したものとみなし、不動産取得税が課税されます。現行では、この「6か月」を「1年」に緩和する措置がとられており、この特例措置が平成28年3月31日まで2年間延長されました。
C 新築の認定長期優良住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置(最大1,300万円控除)が、平成28年3月31日まで2年間延長されました。

(10) 固定資産税の減額措置の拡充と延長
@ 耐震改修を行った既存家屋に係る固定資産税の税額の減額措置の創設
 建築物の耐震改修の促進に関する法律の改正に伴い耐震診断を義務付けられ、その結果が所管行政庁に報告された家屋について、政府の補助を受けて、平成26 年4月1日から平成29 年3月31 日までの間に建築基準法に基づく現行の耐震基準に適合させるよう改修工事を行った場合において、その旨を市町村に申告したものに限り、改修工事が完了した年の翌年度から2年度分の家屋に係る固定資産税については、その家屋に係る固定資産税額の2分の1に相当する金額(2分の1に相当する金額が補助対象改修工事に係る工事費の2.5%に相当する金額を超える場合は、2.5%に相当する金額)が減額されることとなりました。
A 新築住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の延長
 新築された住宅については、新たに固定資産税が課税されることとなった年度から3年度分(中高層耐火建築物については5年度分)に限り、その固定資産税の税額(1戸当たり120u相当額を限度)の2分の1が減額されます。
 この適用期限が、平成28年3月31日まで2年間延長されました。

B 新築の認定長期優良住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の延長
 新築された認定長期優良住宅については、新築から5年度分(中高層耐火建築物については7年度分)に限り、その固定資産税の税額(1戸当たり120u相当額を限度)の2分の1が減額されます。
 この適用期限が、平成28年3月31日まで2年間延長されました。

3.
その他の税制の改正
(1) 給与所得控除の上限の引下げ
 給与収入からは一定の金額が給与所得控除として差し引かれます。その給与所得控除の上限額が適用される給与収入の金額が1,200万円(現行1,500万円)に、その上限額が230万円(現行245万円)に引き下げられました。
 この改正は、平成28年分の所得税から適用されます。

(2) ゴルフ会員権等の譲渡所得の損益通算及び雑損控除の適用廃止
 ゴルフ会員権やリゾート会員権等を譲渡した場合、総合課税の譲渡所得として他の所得と合算して課税され、譲渡損失が発生した場合は、他の所得と損益通算することができました。
 今回の改正で、「生活に通常必要でない資産」の範囲に、主として趣味、娯楽、保養、又は鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権等)が加えられ、譲渡損失の損益通算及び雑損控除の適用が廃止されました。
 この改正は、平成26年4月1日以後に行う資産の譲渡等について適用されます。

(3) 法人税関係
@ 復興特別法人税の廃止
 復興特別法人税(平成24年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度について、法人税額に対し10%の税率で課される法人税)が、1年前倒しで廃止されることになりました。
A 交際費課税の緩和
 平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額のうち、接待飲食費の額の100分の50相当額は、損金算入されることになりました。
 また、中小法人(資本金1億円以下の法人)については、上記と現行制度(定額控除限度額800万円まで損金算入)との選択適用となります。

(4) 消費税の簡易課税制度のみなし仕入率の見直し
 簡易課税制度において、金融業及び保険業は第5種事業、みなし仕入率50%(現行:60%)、不動産業は第6種事業(新設)、みなし仕入率40%(現行:50%)となります。
 この改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間について適用されます。


4. おわりに

 平成26年度の税制改正について、概要と改正点を説明しましたが、税制の適用については、適用要件、適用開始時期、適用期日等を法令でご確認いただき、誤った適用が無いようにご注意ください。
   


(一財)大阪府宅地建物取引主任者センターメールマガジン平成26年5月号執筆分