平成26年第3四半期(H26.7.1〜H26.10.1
主要都市の高度利用地地価動向報告〜地価LOOKレポート〜の結果



不動産鑑定士  深澤 俊男

 
1.はじめに

 国土交通省は、平成26年11月28日に、平成26年第3四半期主要都市の高度利用地地価動向報告〜地価LOOKレポート〜の結果を公表しました。
 この主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)とは、主要都市の地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等の地区について、四半期毎に地価動向を把握することにより先行的な地価動向を明らかにするもので、平成19年第4四半期から継続して公表されています。調査内容は、鑑定評価員(不動産鑑定士)が調査対象地区の不動産市場の動向に関する情報を収集するとともに、不動産鑑定評価に準じた方法によって地価動向を把握し、その結果を国土交通省において集約します。また、各地区の不動産関連企業、金融機関等の地元不動産関係者にヒアリングを行った結果が掲載されています。
 対象地区は、三大都市圏、地方中心都市等において特に地価動向を把握する必要性の高い地区となっており、現在は東京圏65地区、大阪圏39地区、名古屋圏14地区、地方中心都市等32地区の合計150地区です。これを用途別に分けますと、高層住宅等により高度利用されている住宅系地区が44地区、店舗、事務所等が高度に集積している商業系地区が106地区設定されています。
 なお、従来から実施されている、地価公示や都道府県地価調査に比べ、その対象範囲は限定的で、対象地点は少ないですが、地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等のみを抽出・選定し、また速報性を重視したもので、その内容や役割がやや異なっています(【表1】参照)。



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2.全国の地価動向

 国土交通省HPによると、以下のようにまとめられています。
 平成26年第3四半期(7/1〜10/1)の主要都市・高度利用地150地区における地価動向は、上昇が124地区(前回120地区)、横ばいが26地区(前回28地区)、下落が0地区(前回2地区)となり、上昇地区が4地区増え、全体の8割を超えました。
 この上昇基調が継続している理由としては、金融緩和等を背景とした高い不動産投資意欲や、生活利便性が高い地区におけるマンション需要等により、商業系地区・住宅系地区ともに多くの地区で上昇が続いていることによります。
 このように、今回の地価動向は、上昇地区数が前回と同程度(全体の約8割)を占めるなど、上昇基調の継続が見られます(【表2】参照)。

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3.圏域別・用途別の地価動向

 国土交通省HPによると、以下のようにまとめられています。
まず、圏域別の地価動向については、三大都市圏(118地区)のうち東京圏(65地区)では上昇地区が58地区(前回は53地区)、横ばい地区が7地区(前回11地区)、下落地区が0地区(前回1地区)で約9割が上昇となっています。また、大阪圏(39地区)では、上昇地区が30地区(前回31地区)、横ばい地区が9地区(前回8地区)と約8割が上昇となっており、名古屋圏(14地区)では、平成25年第2四半期から6期連続して、全ての地区で上昇を示しています。
 なお、大阪圏の上昇・横ばい・下落の地区数一覧を下記の【表3】に示しております。



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 次に、用途別の地価動向については、住宅系地区(44地区)では、上昇地区が35地区(前回33地区)、横ばい地区が9地区(前回11地区)、下落地区が前回に続き0地区です。また、商業系地区(106地区)では、上昇地区が89地区(前回87地区)、横ばい地区が17地区(前回17地区)、下落地区が0地区(前回2地区)です。

4.大阪府内の地価動向

 大阪府内には以下の19地区が設定されています(【表4】参照)。


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 これら大阪府内の19地区における最近の傾向は、平成25第4四半期において上昇地区が17地区、横ばい地区が2地区で下落地区はなしと上昇傾向が顕著にみられ、直近の平成26年第3四半期までその傾向が継続しています。(【表5】参照)。


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 大阪府内の19地区における取引価格等の市況のトレンドを示したものが下記の【表6】です。ここでは、A.取引価格:対象地区の不動産(土地又は土地・建物の複合不動産の土地に相当する部分)の取引価格、B.取引利回り:対象地区の不動産(土地又は土地・建物の複合不動産)の取引に関する利回り(純収益を取引価格で除した値)、C.取引件数:対象地区の不動産(土地又は土地建物の複合不動産)の取引件数、D.投資用不動産の供給:投資用不動産(賃貸収益を目的とする貸しオフィスや貸しマンションなど)の供給件数、E.オフィス賃料:商業系地区におけるオフィス賃料、F.店舗賃料:商業系地区における店舗賃料、G.マンション分譲価格:住宅系地区における新築マンションの分譲価格、H.マンション賃料:住宅系地区における賃貸マンションの賃料の8項目がその対象です。A.取引価格は2地区を除いて上昇傾向を、B.取引利回りは3地区を除いて低下傾向を、C.取引件数は2地区を除いて横ばい傾向を示しています。なお、D.投資用不動産の供給については、2地区で減少、17地区で横ばいとなっています。次に、オフィス賃料については、4地区を除いた15地区が対象で、そのうち横ばいが12地区、下落が3地区、店舗賃料についても対象は15地区で、そのうち全てが横ばい傾向を示しており、オフィス賃料と店舗賃料の違いが表れています。一方、G.マンション分譲価格は対象4地区のうち、上昇が2地区、横ばいが2地区であり、H.マンション賃料は対象の4地区全てで横ばいを示しています。


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5.その他の地価LOOKレポートの特長

 この主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)には、これを評価した鑑定評価員のコメント及び主な項目の概要が追記されていることや、ヒアリングに応じて頂いた地元不動産業者の声の一例も一部掲載されていることから、既存の公的評価との違いとして、取引現場のさらに詳細な状況を反映した定性的な観点での動向が分かり易くなっていることが特長として挙げられます。なお、これらはインターネットで公開されており、不動産事業に関わる方々のみならず、広く一般の人々も閲覧可能です。また、限定された地区ではあるものの特に高度利用地に焦点を絞っていること、地価公示や地価調査等に比べて発表までの期間が短いこと、四半期毎という頻度で公表されることなどから、これまで以上に高度利用地に関しての地価動向をいち早く把握することが可能です。

(参考資料)
 国土交通省HP 土地水資源局 地価調査課 発表資料より

以 上

平成27年1月号(一財)大阪府宅地建物取引主任者センターメールマガジン執筆分