「不動産取得税について〜住宅を買ったときの税金〜」


税理士 芳郎


1.概要

(1)不動産取得税とは
 不動産取得税は、土地や家屋などの不動産を取得した者(個人、法人の別を問いません)に対して、その「取得」について1回限りで、その不動産の所在する都道府県が課税する地方税です。
 不動産の「取得」には、売買による取得のみではなく、家屋の新築、増改築や不動産の贈与、寄附、交換及び埋立てによる土地の造成など、また、法人に対する現物出資等による取得も含まれます。
 なお、相続による不動産の取得、共有物の分割による不動産の取得(分割前の持分割合を超える部分の取得を除く)、法人の合併又は一定の分割による不動産の取得、法人が新たに法人を設立するために現物出資を行う場合の取得など、所有権の形式的な移転等の場合は、不動産取得税は課されません。

(2)取得の時期
 不動産の取得の時期は、契約内容その他から総合的に判断して、現実に所有権を取得したと認められるときによります。なお、所有権の取得に関する登記の有無は問いません。
 建売住宅などを分譲する宅地建物取引業者が注文者となり、請負契約により請負業者に新築させた建売住宅などの家屋の場合、請負業者から引渡しを受けたときには課税されず、その家屋が分譲されたときに購入者に課税されます。ただし、新築後6ヵ月(平成10年10月1日から令和4年3月31日までの間に新築された家屋については、1年)を経過した日において分譲されていない家屋については、その時点で宅地建物取引業者に課税されます。

2.税額の計算方法

不動産取得税の税額は、次の算式により計算します。

課税標準 × 税率 = 税額

(1)課税標準
 課税標準となる不動産の価格は、固定資産台帳の登録価格(固定資産税評価額)によるのが原則です。
 なお、宅地及び宅地比準土地(市街化区域農地、雑種地等で評価上宅地に類似する土地)の取得が、平成18年1月1日から令和3年3月31日までの間に行われた場合には、課税標準を土地の価格の2分の1とする特例措置があります。

区 分課 税 標 準

宅 地 等固定資産税評価額 × 1/2
(令和3年3月31まで)
宅地等以外固定資産税評価額
家 屋

(2)税率
 不動産取得税の税率は、4%です。
 なお、土地及び住宅の取得が、平成18年1月1日から令和3年3月31日までの間に行われた場合には、税率を3%とする特例措置があります。

区 分税 率
土 地3%(令和3年3月31日まで)
家屋住 宅3%(令和3年3月31日まで)
住宅以外4%           

3.申告書の提出

 不動産を取得した場合は、原則として都道府県に不動産取得税申告書を提出しなければなりません。しかし、申告をしない場合でも都道府県から納税通知書が送られてきます。この納税通知書に基づいて納付すればよいことになります。
 ただし、次項以降の特例を受ける場合は、申告する必要があります。

4.住宅を取得した場合の特例

 一定の新築住宅又は中古住宅を取得等した場合は、課税標準が減額されます。

(1)新築住宅の場合
 住宅を新築(増改築を含みます)したり、新築未使用住宅を取得した場合には、住宅の価格から一定額を控除した額が課税標準とされます。

 @課税標準からの控除額
区分要件住宅1戸当たりの控除額
新築住宅床面積が50u以上240u以下であること1,200万円
新築の認定長期優良住宅@ 床面積が50u以上240u以下であること
A 耐久性、安全性等の住宅性能が一定基準をみたすこと
1,300万円

*戸建以外の貸家住宅は40u以上240u以下(サービス付き高齢者向け住宅は30u以上210u以下となります。
*控除額(1,200万円又は1,300万円)は、共同住宅の場合は一区画ごとに控除します。

A税額の計算式
(固定資産税評価額 − 1,200万円又は1,300万円)× 税率3% = 税額

 住宅の範囲には、いわゆるセカンドハウス(例えば、週末に居住するための郊外等に取得する家屋、遠距離通勤者が平日に居住するため職場近くに取得する家屋等、毎月1日以上の居住の用に供するもの)は含まれますが、別荘(日常生活以外の用に供する家屋で専ら保養の用に供するもの)は含まれません。

(2)中古住宅の場合
 中古住宅(自己の居住用)を取得した場合には、住宅の価格から一定額を控除した額が課税標準とされます。
*平成17年度改正により、「新築された住宅でまだ人の居住の用に供されたことのないもの以外の住宅」が適用対象となるよう規定の整備が行われました。例えば、売主が別荘として使用していた住宅用家屋を取得した場合が該当します。

@要件
A)自己の居住用として取得すること
B)床面積が50u以上240u以下であること
C)次のいずれかに該当すること
 a)昭和57年1月1日以後に新築されたもの
 b)建築基準法施行令第3章及び第5章の4の規定又は地震に対する安全性
   にかかる基準に適合することが証明されたもの

証明書類
イ)耐震基準適合証明書(住宅の取得の日前2年以内にその証明のための住宅の調査が終了したもの。建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関又は住宅瑕疵担保責任保険法人が証明)
ロ)建設住宅性能評価書の写し(住宅の取得の日前2年以内に評価されたもので、耐震等級に係る評価が等級1、等級2又は3であるもの)
ハ)既存住宅売買瑕疵担保責任保険付保証明書(加入後2年以内のもの)

A課税標準からの控除額
住宅1戸当たりの控除額
新築された日控除額
昭和51年1月1日〜昭和56年6月30日350万円
昭和56年7月1日〜昭和60年6月30日420万円
昭和60年7月1日〜平成元年3月31日450万円
平成元年4月1日〜平成9年3月31日 1,000万円
平成9年4月1日以降        1,200万円

B税額の計算式
(固定資産税評価額 − 上記Aの控除額)× 税率3% = 税額

*個人が、耐震基準不適合既存住宅を取得した場合において、取得した日から6ヶ月以内に耐震改修をして、当該住宅が耐震基準に適合することにつき証明を受け、自己の居住の用に供したときも適用されます。

5.住宅用土地を取得した場合の特例

 次の要件に該当する場合で、一定の住宅の敷地を取得したときは、その住宅用土地の税額を軽減する特例の適用が受けられます。

◎税額控除の金額
次のいずれか多いほうの金額

A)45,000円

B)(その土地1u当たりの評価額×1/2)×(住宅の床面積*×2)×3%
                    【*200uを限度】


(1)新築住宅の敷地
区分要件
土地を取得した日以降に住宅の新築をした場合土地を取得した日から3年(土地の取得が令和4年3月31日までに行われた場合。やむを得ない事情がある場合は4年)以内にその土地に住宅を新築したとき(ただし、土地の取得者がその土地をその新築の時まで引き続き所有している場合、又はその新築が土地の取得者からその土地を取得した者によって行われる場合に限る)
土地付住宅を取得した場合新築後居住の用に供されたことのない住宅及びその敷地を新築の日から1年以内に取得したとき(土地と住宅の取得時期は同時である必要はない)
住宅の新築後に土地を取得した場合土地を取得した人が、その土地を取得した日前1年の期間内にその土地の上に住宅を新築していたとき


(2)中古住宅の敷地
区分要件
土地を取得した日以後に住宅を取得した場合土地を取得した人が、その土地を取得した日から1年以内にその土地の上にある中古住宅を取得したとき
住宅を取得した後に土地を取得した場合土地を取得した人が、その土地を取得した日前1年の期間内にその土地の上にある中古住宅を取得していたとき




以上

(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン令和2年8月号執筆分