大阪府に寄せられた宅地建物取引に関する相談事例 bQ

   「売買契約において説明を受けていなかった費用を請求されたとして苦情が申し
    立てられた事例」




  【経過】
   1  買主Aは、平成20年7月、宅建業者Cの媒介で、Bを売主とする中古一戸建
     住宅の売買契約(売買価格2,700万円)を締結し、手付金10万円を支払っ
     た。物件引渡後、Aは重要事項説明で説明されなかった事務代行費40万円を請
     求されたとして府に苦情を申し立てた。
   2  買主Dは、平成20年9月、宅建業者Cの媒介で、宅建業者Eを売主とする新
     築一戸建住宅の売買契約(売買価格3,500万円)を締結し、手付金10万円
     を支払った。同月6日、Dは解約を申し出たが、この時点でEは契約の履行に着
     手していないにもかかわらず、Cから解約には売買価格の5%の支払が必要と説
     明を受けたとして府に苦情を申し立てた。

  【判明した違反事実】
   1 [取引1]
      府がCに事情を聴いたところ、以下のとおり違反事実が確認された。
      (1)重要事項説明書に次の記載不備がある。業法第35条第1項違反
       @ 当該宅地建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名
        義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあっては、そ
        の名称)(同項第1号)
        ・建物について、登記がされているにもかからず、「新築に付未登記」と
         記載した。
       A 排水のための施設の整備の状況(同項第4号)
        ・「完備」と記載しただけでその内容を記載していない。
       B 代金以外に授受される金銭の額及び授受の目的(同項第7号)
        ア 中間金を「相談」、固定資産税等精算金を「日割計算額」と記載した
         だけで、具体的な額を記載していない。
        イ 媒介手数料を「法定手数料」と記載しただけで、具体的な額を記載し
         ていない。
        ウ 事務代行費として40万円を受領したが、重要事項説明書に記載して
         いない。
       C 金銭の貸借のあっせんの内容(同項第12号)
        ・金融機関名、保証料及び利率を具体的に記載していない。
       D 当該宅地又は建物の瑕疵担保責任の履行に関する措置を講ずるかどうか、
        及び講ずる場合におけるその措置の概要(同項第13号)
        ・措置を講ずるかどうか等について記載していない。
      (2)宅建業に関し著しく不当な行為
        ・重要事項説明において「事務代行費」について一切説明していないにも
         かかわらず、「事務代行費」として40万円を買主に請求し、買主は当
         該「事務代行費」の妥当性を判断できないまま40万円を支払うことと
         なった。
   2 [取引2]
      府がC及びEに事情を聴いたところ、以下のとおり違反事実が確認された。
      (1)重要事項説明書に次の記載不備がある。業法第35条第1項違反
       @ 前記1(1)A、Bアイ、C及びDと同じ記載不備
       A 代金以外に授受される金銭の額及び授受の目的(同項第7号)
        ・固定資産税等精算金を「日割計算額」と記載しただけで、具体的な額を
         記載していない。
        ・媒介手数料を「法定手数料」と記載しただけで、具体的金額を記載して
         いない。
      (2)取引の公正を害する行為
        ・売買契約書の特約条項において、当事者の一方が契約の履行に着手する
         まで、相手方は売買価格の5%を支払い、契約を解除できる旨規定して
         いる。手付金は10万円なので、売主が宅建業者の場合における業法第
         39条第2項の規定に反する特約で、買主に不利な特約である。Cにお
         いては、このことの違法性を認識することなく、媒介業務を行った。

  【違反が発生した事情(又は理由)】
   1 [取引1]
      Cは、重要事項説明書の記載不備について、ミスを認めた。また、受領した4
     0万円について、ローン事務手数料であったこと及び諸費用が総額で約200万
     円必要と口頭で説明していたと弁明したが、重要事項説明として説明していない
     ことを認めた。
   2 [取引2]
      C及びEは、重要事項説明書の記載不備について、ミスを認めた。また、手付
     解除の特約について、手付金が少額の契約だったため容易に解約されては困ると
     思い、業法違反と思わずに買主に不利な特約を設けたと述べ、ミスを認めた。

  【処分等】
     府は、次のとおり違反事実等を認定し、Cを業務停止処分(14日間)、Eを文
    書勧告とした。
     C: 業法第35条第1項違反、取引の公正を害する行為(第39条第2項の規
       定に反する特約を定めた取引の媒介を行ったこと)、宅建業に関し著しく不
       当な行為(複数の取引で違反行為を行っていること及び重要事項説明で一切
       説明を行っていない金銭を受領していること。)
     E: 業法第35条第1項及び取引の公正を害する行為(第39条第2項の規定
       に反する特約を定めたこと。)

  【本事例のポイント】
   1 重要事項説明書について
    @ 代金以外に授受される金銭の額及び授受の目的として、媒介手数料やローン事
     務手数料も記載する必要があります。
→売主買主間で授受される金銭のみ記載していることがよく見られますが、買主に必要な資金がどれくらいか認識していただくため、買主が媒介業者に支払う媒介手数料等についても記載してください。また、本件のように媒介手数料を「法定手数料」と記載しても、宅建業法で定められた上限額が必要なのか及び具体的な額がわかりませんので、具体的な額を記載してください。
 なお、ローン事務手数料についても、この欄や金銭の貸借のあっせんの内容の欄に具体的な額を記載してください。

    B 金銭の貸借のあっせんの内容として、融資額、金融機関名、金利、返済方法な
     どあっせんの内容や融資の条件を記載する必要があります。
→金利について、「実行時」といった記載がよく見られますが、これだけでは不十分な記載です。購入者の判断の目安になるよう、実行時期により変動する場合があることを断った上で、具体的に記載してください。

   2 手付放棄による契約の解除について
     宅建業者がみずから売主の場合、手付がいかなる性質のものであっても、売主が
    契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して契約の解除をすることが
    できます。
→手付金が少額だったからといって、買主側の手付解除にあたり、受領した手付金を超える額を受け取ることはできません。契約書でそのような特約を定めても、業法第39条第3項により無効となります。