消費税の税率引上げと不動産取引

税理士  コ  芳郎

 平成24年8月に成立した「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する法律」により、消費税法の一部が改正されました。
 また、平成25年10月1日に、政府は、消費税率(国・地方)を、平成26年4月1日より5%から8%へ引き上げることを確認しました。なお、詳細については、以下のとおりです。


1.
消費税率の引上げ

 消費税率及び地方消費税率について、次のとおり2段階で引上げることとされました。
 
※ 経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、消費税率引上げの前に、経済
  状況等を総合的に勘案した上で、消費税率引上げの停止を含め所要の措置を講ずる
  こととされています。(10%引上げ時は、平成26年12月頃とされています)
※ 引上げ後の税率は、経過措置が適用されるものを除き、適用開始日以後に行われる
  資産の譲渡等について適用されます。


2. 平成26年4月1日前後の取引

  引き渡しが平成26年3月31日までに完了すれば、消費税は5%になります。
  また、引き渡しが平成26年4月1日以降に完了するものは、消費税は8%になります。
 


3. 「工事の請負に係る契約」に関する経過措置

(1)「工事の請負に係る契約」に該当する注文住宅の場合は、経過措置の適用がありま
  す。平成25年9月30日までに、その注文住宅の請負契約を締結している場合は、引き
  渡しが平成26年4月1日以降になっても、消費税は5%となります。
  ※ 追加契約等の締結が平成25年10月1日以降で、その注文住宅の引き渡しが平成
  26年4月1日以降になる場合は、その追加契約分は消費税が8%になります。


(2)分譲住宅や分譲マンションは、売買契約なので経過措置の適用はなく、引き渡し時の
  消費税率が適用されます。
   しかし、その分譲住宅や分譲マンションの契約が、壁の色やドアの形状などを特注で
  きる契約等で、その契約が「工事の請負に係る契約」に類する場合は、物件価格を含
  めた契約全体が経過措置の対象となり、平成25年9月30日までに契約を締結していれ
  ば、引き渡しが平成26年4月1日以降でも消費税は5%となります。
  ※ 建築後に注文を受けて譲渡する建物の取扱い
  既に建設されている住宅であっても、顧客の注文を受け、内外装等の模様替え等をし
  た上で譲渡する契約を締結した場合には、その住宅が新築に係るものであり、かつ、
  その注文及び譲渡契約の締結が平成25年9月30日までに行われたものであるとき
  は、経過措置が適用されます。

(3)消費税率10%への引上げ時の経過措置
   平成27年10月1日から消費税率は10%へ引き上げられる予定です。その際にも「工
  事の請負に係る契約」については、8%への引上げ時と同様の経過措置が設けられ
  ています。
   したがって、平成25年10月1日から平成27年4月1日までの間に注文住宅の請負契
  約を締結した場合は、その引き渡しが平成27年10月1日以降でも消費税は8%になり
  ます。


4. 中古住宅や中古マンションの売買

 引き渡しが平成26年3月31日までに完了すれば、消費税は5%になります。(上記2.「平成26年4月1日前後の取引)参照)
 なお、次の事項にご留意ください。

 (1)個人が自宅を売却する場合
    その住宅の売却には消費税はかかりません。

 (2)不動産業者の仲介がある場合
    売買契約を平成26年3月31日までに完了すれば、仲介手数料に係る消費税は5%と
   なります。
 

以上

(一財)大阪府宅地建物取引主任者センターメールマガジン平成26年1月号執筆分