『住宅の三世代同居改修工事等に係る特例の創設について』



税理士 松田 昭久


T.はじめに

 平成28年度の税制改正において、三世代同居に係る住宅改修について、所得税の軽減措置が創設されました。その軽減措置の理由は、出産・子育てへの不安や負担が大きいことが少子化の要因の一つであることを踏まえ、安心して子どもを育てられる環境整備の手段として、世代間の助け合いを図るための三世代同居を促進するために設けられたものです。

 三世代同居に係る住宅改修の税額軽減制度の内容は、以下の2つがありいずれかを選択します。
@ リフォーム投資型減税(所得税)最大控除額は居住1年目のみで25万円
A リフォームローン型減税(所得税)最大控除額は居住1年目から5年間で62.5万円

詳細は次のようになります。

II. リフォーム投資型減税(所得税)

 個人が、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に、自己の居住の用に供する家屋について一定の同居対応改修工事を行った場合、工事費の一定額をその年分の所得税額から控除する特例を受けることができます。
 【減税額】
 その工事に係る標準的な工事費用相当額(上限:250万円)の10%がその年分の所得税額から控除されます。

 注1 「一定の同居対応改修工事」とは以下@〜Cのいずれかに該当する工事で、補助金等の額を引いた後の標準的な工事費用相当額が50万円を超えるものです。
「補助金等」とは、@〜Cのいずれかの同居対応改修工事を含む住宅の増改築等工事の費用に関し国又は地方公共団体から交付される補助金又は給付金その他これに準ずるものをいいます。
ただし、改修後、その者の居住の用に供する部分に、調理室、浴室、便所又は玄関のうち、いずれか二以上のものがそれぞれ複数ある場合に限ります。

@ 調理室を増設する工事(ミニキッチンでも可です。ただし、改修後の住宅にミニキッチン以外の調理室がある場合に限ります。)
A 浴室を増設する工事(浴槽がないシャワー専用の浴室でも可です。ただし、改修後の住宅に浴槽を有する浴室がある場合に限ります。)
B 便所を増設する工事
C 玄関を増設する工事
※ミニキッチンとは、台所流し、こんろ台その他調理のために必要な器具又は設備が一体として組み込まれた既製の小型ユニット(間口がおおむね1500mm以下のもの)をいいます。


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注2 「標準的な工事費用相当額」とは、同居対応改修工事の改修部位ごとに標準的な工事費用の額として定められた下記の金額でその同居対応改修工事を行った箇所数を乗じて計算した金額をいいます。


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注3 適用要件

@ その者が主として居住の用に供する家屋であること
A 住宅の引渡し又は工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
B その年の前年以前3年内の各年分においてこの税額控除の適用を受けた人は、その年分においてはこの税額控除の適用を受けることはできません。
ただし、各年分の適用と異なる居住用家屋について同居対応改修工事をした場合には、適用を受けることができます。
C 床面積が50u以上あること
D 店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
E 合計所得金額が3,000万円以下であること
F 住宅ローン控除及び特定の増改築等に係る住宅ローン控除の適用を受ける場合にはこの特例の適用を受けることはできません。
   

注4 確定申告手続き
確定申告の際、以下の書類又はその写しを税務署に提出が必要です。

@ 税額控除に関する明細書
A 登記事項証明書等(床面積が50u以上であることを明らかにする書類)
B 住民票の写し
C 増改築等工事証明書(以下のいずれかが発行したもの)
  @.登録された建築士事務所に属する建築士
  A.指定確認検査機関
  B.登録住宅性能評価機関
  C.住宅瑕疵担保責任保険法人
D 補助金等の額を証する書類

III. リフォームローン型減税(所得税)
 個人が、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に、償還期間が5年以上の住宅ローンを借りて、自己の居住の用に供する家屋について一定の同居対応改修工事を含む増改築等工事を行った場合、所得税額の控除を受けることができます。
 【減税額】
(ア)

同居対応改修工事に係る借入金:年末残高の2%を5年間税額控除
(上限:250万円まで)

(イ) (ア)以外の増改築等に係る借入金:年末残高の1%を5年間税額控除
(ただし、控除対象となる(ア)及び(イ)における借入金額の上限は合計1,000万円)

注1 「一定の同居対応改修工事」は、リフォーム投資型減税と同様です。
注2 適用要件

@ その者が主として居住の用に供する家屋であること
A 住宅の引渡し又は工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
B 床面積が50u以上あること
C 店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
D 合計所得金額が3,000万円以下であること
E 特定改修工事をした場合の特別控除の適用を受ける場合には、この特例の適用を受けることはできません。

注3 確定申告手続き
確定申告の際、以下の書類又はその写しを税務署に提出が必要です。
@ 税額控除に関する明細書
A 登記事項証明書等(床面積が50u以上であることを明らかにする書類)
B 住民票の写し
C 増改築等工事証明書(以下のいずれかが発行したもの)
@.登録された建築士事務所に属する建築士
A.指定確認検査機関
B.登録住宅性能評価機関
C.住宅瑕疵担保責任保険法人
D 償還期間が5年以上の一定の住宅借入金及び死亡時一括償還に係る借入金等の残高証明書

IV. 計算事例

リフォーム内容
浴室設置(標準工事費用:1,406,000円)
玄関設置(標準工事費用: 655,300円)
国・地方公共団体からの補助金はありません。
年末の住宅ローン残高

1年目

2年目

3年目

4年目

5年目

6年目

7年目

1,800千円

1,500千円

1,200千円

900千円

600千円

300千円

0


1. リフォーム投資型減税の場合
@

(1,406,000円+655,300円)=2,061,300円≦2,500,000円 ∴ 2,061,300円

A 2,061,300円 ×10% = 206,100円(百円未満切捨て)

2. リフォームローン型減税の場合

 

1年目

2年目

3年目

4年目

5年目

合計

ローン残高

1,800千円

1,500千円

1,200千円

900千円

600千円

税額控除額

36千円

30千円

24千円

18千円

12千円

120千円

ローン残高 × 2%=各年分の税額控除額
5年間の合計控除額 120,000円
この事例では1のリフォーム投資型減税の方が有利となります。これはローン型減税が、毎年ローン残高が返済により残高が減少するためです。

V. さいごに

 リフォームに係る所得税額控除の制度は、他にもローン残高に対して1%を控除する住宅ローン控除(10年間)、ローン残高に対して2%を控除する特定バリアフリー改修や特定断熱改修に係るローン控除(5年間)があります。さらにローンが不要な特定バリアフリー改修に係る税額控除(居住年のみで最高20万円)や特定断熱改修に係る税額控除(居住年のみで最高30万円)、特定耐震改修に係る税額控除(居住年のみで最高25万円)の制度があります。
 また固定資産税についても、申告を要件に、特定バリアフリー改修、特定断熱改修、特定耐震改修は、減税措置がありますので注意が必要です。




(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン平成28年7月号執筆分