土壌汚染と瑕疵担保責任A
弁護士 澤 登
前回は、売買契約書中に土壌汚染に対する引渡前調査の条項が盛り込まれた事案についての裁判例(東京地判平27.3.10 RETIO 101号100頁)が紹介されました。今回は土地売買後に発見された土地汚染の一部を隠れた瑕疵と認め、買主の損害賠償請求を一部認容した裁判例を紹介し、今回の事例から学ぶべき留意点などをご説明いたします。
買主X(原告・大手製紙業者)は、売主Y(被告・公的研究機関)から、Yが研究施設として用いてきた土地及び建物を、公開入札を経て売買代金40億1000万円で取得した。Yは入札に先立ち、地理的、内容的に限定された範囲で土地の土壌汚染につき調査を行ったところ、一部に土壌汚染対策法の基準値を超える特定有害物質が検出された。Yは入札手続においてこの結果を公表した上、検出された汚染については、Yの負担で除去することを約し、実際にYにより除去工事が実施された。また、Xは入札手続において、Yに対し、土地の一部につき土壌汚染の存否が不明であることを前提とする売買である認識を示した上で、将来的に汚染が発生した場合の浄化費用の負担について質問したところ、Yは土壌汚染対策法7条1項ただし書きに基づいて対応する旨を回答し、同条1項の条文を引用した。 Xは、本件土地及び建物を落札し、Yによる土壌汚染の除去工事を終えた後、本件土地の土壌汚染につき改めて調査を行ったところ、一定の範囲で、基準値を上回る特定有害物質等の汚染物質が検出された。 Xは、主位的に、Xによる調査によって発見された汚染物質が本件土地の隠れた瑕疵に当たるとして瑕疵担保責任に基づき、予備的には土壌浄化義務の債務不履行責任に基づき、当該瑕疵が判明していたならば減価されていた価格相当額として3億6000万円及び調査費用相当額として7950万円余の賠償を求めた事案である。
裁判所の判断
(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン平成30年4月号執筆分