大阪の地価動向について

不動産鑑定士 西川 和孝

1.はじめに

 (財)大阪府宅地建物取引センター「メールマガジン」創刊第100号、誠におめでとうございます。平成14年4月から、宅地建物取引主任者に関する有用な情報をタイムリーに配信され、取引主任者をはじめとする関連団体や関係者のスキルアップ等に果たされた努力、役割に深く敬意を表します。今後も、200号、300号と益々充実した「メールマガジン」の配信を一読者としてお願い申し上げます。

2.全国的な地価動向

 平成22年地価公示を全国的な観点から見ていえることは、三大都市圏では、全用途におい て前年よりも下落率は拡大し、且つ、それは地方圏を上回る下落となったことです。
 都道府県の平均下落率で見ますと、住宅地では、下落率の最も小さかったのは宮崎県の△1.7%、最も大きな下落率は石川県の△6.4%でした。 同じく商業地では、最も下落率の小さかったのは沖縄県の△2.6%、最も大きかったのは、東京都の△9.0%でした。
 個別の地点でみますと、対前年に比べ最も下落率の大きかった地点は、住宅地△17.5%、 商業地△26.9%で、とともに東京都でありました。

3.大阪府下全体の近年の地価動向について

 次にここ2年間における府下の地価動向を見ますと、平成21年の地価公示(平成21年1 月1日価格時点)においては、府全域について、住宅地では全域平均△1.9%、商業地で△3.8%、工業地(準工業地)△1.6〜1.8%となっています。  平成22年においては、同住宅地△4.8%、商業地△8.9%、工業地(準工業地△4.9〜5.9%と用途全てにおいて下落しており、且つ、その下落幅は拡大している事がわかります。ただし、府下全域において、その地域ごとに下落の様相が若干異なっています。

4.府下地域別に見た地価動向について

(1)大阪市

 大阪市は、平成21年では、住宅地△2.2%、商業地△5.3%であったものが、平成22年では住宅地△5.6%、商業地△11.7%と下落幅が拡大しました。
住宅地で大きく下落した地域は、鶴見区の△7.6%を筆頭に、城東区△7.4%旭区△7.3%、都島区△7.2%と続いています。 商業地では、中央区△17.5%を筆頭に、北区△13.8%、大正区△11.5%、西区△11.1%、都島区と浪速区で△10.1%と2ケタの下落となりました。

(2)北大阪地域

 北大阪地域は、平成21年では、住宅地△2.7%、商業地△3.2%であったものが、平成22年では、住宅地△4.0%、商業地△4.7%とやはり下落幅は拡大したものの府下全域平均より、住宅地、商業地ともにその下落幅は小さいものとなっています。(これは大阪府においては、東部や特に南部の地域より、北部地域への移動を指向する傾向があると思われることにも関連しているかもしれません)
 しかし、中には住宅地では豊能町の△7.0%、商業地では吹田市の△7.7%が、この地域では目立った下落幅となっています。

(3)東部大阪地域

 東部大阪地域は、平成21年に比べ平成22年度の下落率の拡大が最も顕著であった地域といえます。
 地域での平均では、住宅地が△1.8%から△5.9%へ、商業地では△1.0%から△6.1%へ拡大しています。
 市町村別では、四條畷市の住宅地が△0.8%から△7.4%へ、交野市が△1.1から△7%へ、東大阪市が△0.5%から△6.4%へ大きく拡大しています。 また、商業地においても四條畷市が△0.8%から△7.1%へ、交野市が△1.1%から△6.5%へ、東大阪市も△0.5%から△6.9%へ大きく拡大しています。

(4)堺市

 堺市は、平成21年では、住宅地△1.9%、商業地△2.0%であったものが、平成22年では住宅地△5.0%、商業地△8.2%と下落幅が拡大しました。
 住宅地で大きく下落した地域は、美原区の△8%、商業地においては、西区△8.8%、堺区△8.5%、東区△8.3%の下落となりました。

(5)南河内地域

 南河内地域は、平成21年では、住宅地△1.9%、商業地△2.3%であったものが、平成22年では、住宅地△4.7%、商業地△5.1%と下落幅は拡大しました。 中でも住宅地では河南町の△6.1%、千早赤阪村△5.9%や商業地では松原市の△5.9%、藤井寺市△5.8%、羽曳野市△5.7%が、この地域では目立った下落幅となっています。

(6)泉州地域

 泉州地域は、地域全体での平均では、住宅地が△1.2%から△4.2%へ商業地では△0.9%から△5.4%へ拡大しています。 市町村別では、阪南市の住宅地が△1.4%から△4.4%へ、泉南市の住宅地が△3.7%となっています。

 以上、地域別に地価動向を見て参りましたが、全体が下落傾向にあるとはいえそれぞれの地域ごとに異なった動きが見られることがわかります。秋には、今年度の地価調査が発表されます。今後の動きにつきましても、注意深く調査、分析することが求められていると思います。