東京地方裁判所平成24年7月5日判決(判例時報2173号135頁)は、期間2年ごとの賃料1ヵ月分の更新料について最高裁判決を踏まえ有効とした上、更に「賃貸借契約終了後に明渡を遅延した場合に明渡予定日の翌日から明渡済みまで賃料の倍額の損害金を支払う。」と定めた約定は賃貸人による強制的建物明渡実現手続費用などを勘案すれば合理的なものであるとして消費者契約法第9条(損害賠償の予定額が当該契約と同種の消費者契約での事業者に平均的に生じる損害を超えるときはその超過部分は無効となる。)及び同法10条後段には該当せず無効ではないとしました。この事案は、適格消費者団体(消費者契約法に基づき、消費者団体のうち内閣総理大臣の認定をうけたものは、事業者等に対して一定の要件の下に差止請求ができます。)が不動産賃貸業を営む法人に対し、同法12条3項に基づき前記更新料及び損害金条項(契約終了時に建物明渡を遅延したときは明渡完了時まで賃料の倍額相当額の損害金を支払うこと。)の使用差止を求めたものです、いずれの請求も棄却されました(控訴されています。)。同判決は、更新料について、最高裁判決を踏まえ同法10条には違反せず、また契約解除に伴う損害賠償予定額及び違約金のいずれでもないので同法9条には違反しないとしました。更に、同判決は、明渡遅延時の違約金条項については、同法9条所定の契約解除に伴う損害賠償を定めたものではないとし、そして明渡遅延による賃貸人の損害填補や明渡義務の履行促進という観点に照らし不当に高額でないかぎり同法10条後段には該当しないとしました。更新料特約を含めて非事業者を賃借人(消費者契約法での消費者)とする賃貸借契約においては、賃借人の義務を定めた条項については、賃借人が同法に該当して無効であると主張したり、あるいは適格消費者団体がその条項の使用差止を求める可能性があります。消費者契約とされる賃貸借契約の条項が今後とも消費者契約法との関係で問題とされることがあると考えられるので、賃貸借契約を締結するに際しては消費者契約法への配慮が欠かせなくなっています。 |