平成25年度税制改正のポイント(住宅・不動産関連税制)

税理士 金井恵美子

1. はじめに
 平成25年度税制改正は、民間投資の喚起、雇用・所得の拡大、中小企業対策、農林水産業対策、社会保障・税一体改革を着実な実施等のために、税制上の措置を講ずるものとされています。
 具体的には、所得税の最高税率の引上げ、相続税の基礎控除の圧縮、相続税及び贈与税の税率構造の見直しなどの改正が行われました。
 今回は、平成25年度税制改正のうち、住宅や不動産に関係する項目について解説します。

2. 所得税の減税措置
   
(1)

ローン控除の拡充

 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除は、適用期限が平成29年12月31日まで4年延長され、平成26年から平成29年までの間に居住の用に供した場合について、次のとおり拡充されました。

イ 一般の住宅の場合(一般の住宅とは、下記ロの認定住宅以外の住宅をいいます。)
居住年 借入限度額 控除率 各年の控除限度額 控除限度額
平成26年1月〜3月 2000万円 1.0% 20万円 200万円
平成26年4月〜平成29年12月 4000万円 1.0% 40万円 400万円
平成26年4月から平成29年12月までの欄の金額は、一般の住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合の金額であり、それ以外の場合における借入限度額は2,000万円です。

ロ 認定住宅の場合(認定住宅とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいいます。)
居住年 借入限度額 控除率 各年の控除限度額 控除限度額
平成26年1月〜3月 3000万円 1.0% 30万円 300万円
平成26年4月〜平成29年12月 5000万円 1.0% 50万円

500万円

平成26年4月から平成29年12月までの欄の金額は、認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合の金額であり、それ以外の場合における借入限度額は3,000万円です。
また、適用の対象となる住宅の取得等について、要件の緩和等の措置が行われています。

(2) 認定長期優良住宅の新築等をした場合の特別控除の拡充

 認定長期優良住宅の新築等をした場合の所得税の特別控除は、適用期限が平成29年12月31日まで4年延長され、平成26年から平成29年までの間に居住の用に供した場合について、次のとおり拡充されました。

居住年 対象住宅 控除対象限度額 控除率 控除限度額
平成26年1月〜3月 認定長期優良住宅 500万円 10% 50万円
平成26年4月〜平成29年12月

認定長期優良住宅
認定低炭素住宅

650万円 10%

65万円

平成26年4月から平成29年12月までの欄の金額は、住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合の金額であり、それ以外の場合における控除対象限度額は500万円、控除限度額は50万円です。

(3) 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の特別控除の拡充

既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除は、適用期限が平成29年12月31日まで5年延長され、平成26年から平成29年までの間に居住の用に供した場合について、次のとおり拡充されました。

イ 省エネ改修工事の場合

居住年 改修工事限度額 控除率 控除限度額
平成26年1月〜3月 200万円(300万円) 10% 20万円(30万円)
平成26年4月〜平成29年12月 250万円(350万円) 10% 25万円(35万円)
カッコ内の金額は、省エネ改修工事と併せて太陽光発電装置を設置する場合の改修工事限度額及び控除限度額です。
平成26年4月から平成29年12月までの欄の金額は、省エネ改修工事に要した費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合の金額であり、それ以外の場合における改修工事限度額は200万円、控除限度額は20万円です。

ロ バリアフリー改修工事の場合

居住年 改修工事限度額 控除率 控除限度額
平成26年1月〜平成29年12月 200万円 10% 20万円
その年の前年以前3年内にバリアフリー改修工事を行い、本税額控除の適用を受けている場合には適用されません。
また、税額控除額の計算方法や対象となる特定の改修工事に係る工事費要件等が見直されました。

(4) 既存住宅の耐震改修をした場合の特別控除の拡充

既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除は、適用期限を平成29年12月31日まで4年延長し、次のとおり拡充されました。

居住年 改修工事限度額 控除率 控除限度額
平成26年1月〜3月 200万円 10% 20万円
平成26年4月〜平成29年12月 250万円 10% 25万円
平成26年4月から平成29年12月までの欄の金額は、耐震改修工事に要した費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合の金額であり、それ以外の場合における耐震改修工事限度額は200万円、控除限度額は20万円です。
また、税額控除額の計算方法等が見直されました。

(5) 特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の特別控除の拡充

特定の増改築等(省エネ改修工事及びバリアフリー改修工事をいいます。)に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例は、適用期限を平成29年12月31日まで4年延長し、次のとおり拡充されました。

居住年 特定増改築等限度額 控除率

各年の
控除限度額

最大控除額
その他の借入限度額
平成26年1月〜3月 200万円 2.0% 4万円 60万円
800万円 1.0% 8万円
平成26年4月〜平成29年12月 250万円 2.0% 5万円 62.5万円
750万円 1.0% 7.5万円
平成26年4月から平成29年12月までの欄の金額は、特定の増改築等に要した費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合の金額であり、それ以外の場合における特定増改築等限度額は200万円、控除期間の最大控除額は60万円です。
また、対象となる特定の増改築等に係る工事費要件等が見直されました。

(6) 東日本大震災の被災者等に係るローン控除の拡充

東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除制度の特例は、適用期限を平成29年12月31日まで4年延長し、次のとおり拡充されました。

居住年 借入限度額 控除率 各年の控除限度額 控除限度額
平成26年1月〜3月 3000万円 1.2% 36万円 360万円
平成26年4月〜平成29年12月 5000万円 1.2% 60万円 600万円


3. 住民税の減税措置

平成26年分以後の所得税において、その年分の住宅借入金等特別税額控除額のうちその年分の所得税額から控除した残額がある場合には、その残額は、翌年度分の個人住民税において、次の控除限度額の範囲内で減額されます。
居住年 控除限度額
平成26年1月〜3月 所得税の課税総所得金額等×5%(最高9.75万円)
平成26年4月〜平成29年12月 所得税の課税総所得金額等×7%(最高13.65万円)
平成26年4月から平成29年12月までの欄の金額は、住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合(東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合を含む。)の金額であり、それ以外の場合における控除限度額は所得税の課税総所得金額等×5%(最高9.75万円)です。


4.

固定資産税の減税措置

固定資産税及び都市計画税について、耐震改修等を行った住宅に係る減税措置、サービス付高齢者向け賃貸住宅に係る減税措置等が行われました。

5. その他

所得税及び法人税における特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除について、その適用対象である都市緑地法に規定する特別緑地保全地区内の土地が同法の規定により買い取られる場合における買取りをする者の範囲に、同法の緑地管理機構とみなされる都市の低炭素化の促進に関する法律に規定する特定緑地管理機構で一定のものが加えられました。
所得税及び法人税における優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の課税の特例について、その対象となる特定の民間再開発事業及び既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え等の場合の譲渡所得の課税の特例等の対象となる特定民間再開発事業の施行区域に、都市の低炭素化の促進に関する法律に規定する認定集約都市開発事業のうち当該認定集約都市開発事業が施行される区域の面積が2,000u以上である等一定の要件を満たすものの当該区域が加えられました(平成25年6月1日以後に行う土地等の譲渡について適用)。
不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置について、その適用期限を5年延長した上、平成26年4月1日以後に作成される文書に係る税率が引き下げられました。
サービス付き高齢者向け賃貸住宅の割増償却制度及び特定再開発建築物等の割増償却制度が、一部縮小して延長されました。
不動産の保存登記等に係る登録免許税についての軽減措置が2年(平成27年3月31日まで)延長されました。
不動産取得税の軽減措置が2年(平成27年3月31日まで)延長されました。

6. おわりに

 平成25年度における住宅税制の改正は、消費税の税率が8%又は10%となる場合を想定したものです。
したがって、工事の請負等に関する経過措置によって、住宅の対価等について5%の税率が適用される場合には、平成26年4月以後の居住であっても、控除限度額は従来の金額となります。
 工事の請負や住宅の販売にあたって、誤った説明をしないよう注意が必要です。

(一財)大阪府宅地建物取引主任者センターメールマガジン平成25年6月号執筆記事