(1) |
事案の概要 |
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ア |
平成22年10月15日頃、売主Y社は、分譲住宅を建築販売する目的で本件土地を購入し、その後本件建物を建築した。
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イ |
本件土地と東側隣接地との境界線に沿ってコンクリート構築物が本件土地内に入り込む形で存在していたが、Y社は本件土地購入に際して、東側隣接地所有者よりコンクリート構築物の一定範囲を残すよう要請され、これを口頭で承諾した。
本件土地と東側隣接地との境界線と、本件土地前面(南側)の道路境界線との交点には境界標が設置されており、この境界標は一見して明らかである。
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ウ |
平成23年2月7日、買主Xは、媒介業者より本件土地建物(以下「本件不動産」という。)の現地案内と説明を受けた。
同月8日、XとY社は、本件不動産を代金1500万円で売買する旨の売買契約を締結した。
同月24日、X、C(Y社の従業員)、媒介業者は、本件不動産の現地調査をした。
同月25日、Y社はXから残代金の支払いを受け、これと引換えにXに対し本件不動産につき所有権移転登記手続を行い、Xに本件不動産を引き渡した。
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エ |
その後、Xは、本件コンクリート構築物は東側隣接地所有者との協定(以下「本件協定」という。)があってこれを撤去できないにもかかわらず、売買契約締結時にCより「買った後自分で切れる」等との虚偽の説明をされ、また本件売買契約締結時にY社は本件土地の地盤調査書を見せず杭を31本も打った軟弱地盤であることを秘匿し本件土地の地盤に何も問題ないとの虚偽の説明をされ、Xはこれによって誤認したとして、消費者契約法4条に基づく契約取消及び錯誤無効又は詐欺取消並びに瑕疵担保責任に基づく契約解除を根拠に、Y社に対し、原状回復費用として本件不動産購入代金及び諸費用等1731万円余、説明義務違反に基づく損害として慰謝料1650万円の合計3381万円余の支払いを求めて提訴した。
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オ |
なお、Y社は、本件協定の存在を説明しなかった点については、協定を結んだY社担当者が契約担当者であったCに伝えておらず、Cが認識していなかったものであり、あえて告げなかったものではないと主張した。
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(2) |
裁判所の判断 |
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本件土地の地盤が軟弱であるとの主張については、「本件土地が軟弱地盤であると認める証拠はなく、本件土地に瑕疵があるとは認められない」としてXの主張を退け、本件コンクリート部分については、消費者契約法4条に基づく契約取消及び錯誤無効又は詐欺取消並びに瑕疵担保責任に基づく契約解除の主張は退けたが、以下のとおり、慰謝料については一部認容した。
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ア |
本件売買契約の締結時点では、Cにおいて、本件コンクリート部分を具体的に認識していないものと合理的に推測される以上、その処分についてまでCが言及することは想定し難く、この点についてのXの供述は信用し難い。
そうであれば、本件売買契約締結時ないし本件現地確認時においても、本件コンクリート部分についてのCの発言としてXが主張する発言の存在は、証拠上認められない。
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イ |
本件コンクリート部分の存在は、現地を確認すれば、本件擁壁及び本件境界標の存在を含めて、一見して目視できることは明らかである。実際にも、Xは本件現地案内の際に、これらを確認していることを認めている。
そうであれば、これをもって瑕疵が隠れたものであることにはならない。
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ウ |
Xにおいて本件コンクリート部分の外観を確認し、本件境界標を確認しても、これについて購入時には特に問題とせず、そればかりか、本件現地案内の当日には購入する意向を積極的に示し、翌日には早くも売買契約を締結して2月中に決済を終了させた事実経過も考慮すると、本件協定に関する情報がXに与えられていたとしても、Xが本件土地を購入しなかったとまでは認め難い。
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エ |
Xにおいて、本件協定に関する情報がなかったことで、想定していなかった土地利用の制約を受け、東側隣接地所有者との関係でも相当な精神的負担を負うことに至ったことは容易に認められる。
そこで、購入価格、交渉経緯等、本件の諸般の事情を総合的に考慮すると、本件協定の存在に伴って本件土地利用の制約がかかることによってXの被る精神的苦痛を慰謝するに相当な金額としては、55万円を限度で認めるのが相当である。
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