平成27年度税制改正のポイント(住宅・不動産関連税制について)


税理士 武智 寛幸

 
1.はじめに
   「デフレ脱却.経済再生」の実現、地方創生への取組、経済再生と財政健全化の両立、
国境を越えた取引等に係る課税の国際的調和、震災からの復興支援等の観点から、平成27
年度の税制改正が行われました。
 今回は、平成27年度税制改正のうち、住宅・不動産関連税制の改正点を解説します。

2.土地住宅税制の改正
 
(1)  住宅ローン控除等の適用期限の延長
 次に掲げる住宅取得等に係る措置について、消費税率の引上げ時期延期に伴い、適用期限(平成29年12月31日)が平成31年6月30日まで1年6月延長されました。
  @  住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除
  A  特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例
  B  既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除
  C  既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除
  D  認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除

(2)  住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の拡充と延長

  @  直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税限度額が次のとおりとなり、その適用期限が平成31年6月30日まで延長されました。
 この改正は、平成27年1月1日以後に贈与により取得をする住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。

    (イ)  住宅用家屋の新築等に係る対価の額又は費用の額について適用される消費税率が10%である場合
   
住宅用家屋の新築等に係る
契約の締結期間
省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性を備えた住宅用家屋 左記以外の
住宅用家屋
平成28年10月〜平成29年9月 3,000万円 2,500万円
平成29年10月〜平成30年9月 1,500万円 1,000万円
平成30年10月〜平成31年6月 1,200万円 700万円


    (ロ) 上記@以外の場合
   
住宅用家屋の新築等に係る
契約の締結期間
省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性を備えた住宅用家屋 左記以外の
住宅用家屋
〜平成27年12月 1,500万円 1,000万円
平成28年1月〜平成29年9月 1,200万円 700万円
平成29年10月〜平成30年9月 1,000万円 500万円
平成30年10月〜平成31年6月 800万円 300万円


  A  住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例の延長
 相続時精算課税制度は65歳以上の直系尊属から20歳以上の推定相続人(平成27年より孫含む。)への贈与について、制度を選択することにより2,500万円の控除額が設けられる制度(将来、贈与者の相続の際に相続税額の計算に含まれる制度)です。
 住宅取得等資金の贈与について、相続時精算課税制度を適用する場合は贈与者の年齢制限がありません。この適用期限が平成31年6月30日まで延長されました。

(3)  特定の資産の買換えの場合等の課税の特例の見直しと延長
 長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物、機械装置等への買換えについて、次のとおり見直しを行った上、その適用期限が平成29年3月31日まで延長されました。
  @  買換資産から機械装置が除外されました。
  A  地域再生法の集中地域以外の地域から集中地域への買換えに係る課税の繰延べ割合が100分の75(特定業務施設の集積の程度が特に著しく高い集中地域への買換えの場合には、100分の70)(現行100分の80)に引き下げられました。

(4)  地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除制度の創設
 青色申告書を提出する事業者で地域再生法の一部を改正する法律の施行の日から平成30年3月31日までの間に地方活力向上地域特定業務施設整備計画について認定を受けたものが、その認定の日から2年以内に、地方活力向上地域内において、その認定を受けた地方活力向上地域特定業務施設整備計画に記載された地域再生法の特定業務施設に該当する建物等及び構築物で、一定の規模以上のものの取得等をして、その事業の用に供した場合には、その取得価額の100分の15(その地方活力向上地域特定業務施設整備計画が移転型計画である場合には、100分の25)相当額の特別償却とその認定の日が次の期間のいずれに含まれるかに応じそれぞれ次の金額の特別税額控除との選択適用ができることとなりました。ただし、特別税額控除額については、当期の税額の100分の20相当額が限度となります。
  @  地域再生法の一部を改正する法律の施行の日から平成29年3月31日までの期間
 その取得価額の100分の4(その地方活力向上地域特定業務施設整備計画が移転型計画である場合には、100分の7)相当額
  A  平成29年4月1日から平成30年3月31日までの期間
 その取得価額の100分の2(その地方活力向上地域特定業務施設整備計画が移転型計画である場合には、100分の4)相当額

(5)  次に掲げる租税特別措置の適用期限が延長されました。
  @  倉庫用建物等の割増償却制度の適用期限が2年延長されました。
  A  特定の民間住宅地造成事業のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の適用期限が3年延長されました。

(6)  不動産取得税の改正
  @  宅地建物取引業者が取得する改修工事対象住宅に係る不動産取得税の減額措置
 宅地建物取引業者が、改修工事対象住宅の取得後2年以内に、一定の改修工事(増築、改築、一定の耐震基準に適合させるための修繕又は模様替え、バリアフリー改修工事など)を行った後、その住宅を個人に対し譲渡し、購入者が自己の居住の用に供した場合について、その宅地建物取引業者による取得が平成29年3月31日までに行われた場合に限り、一定の税額を減額する特例措置が設けられました。
  A  次の各不動産について、非課税とする特例措置が講じられました。
    (イ)  児童福祉法の規定により市町村の認可を得た者が同法に規定する事業所内保育事業(利用定員が6人以上)の用に供する不動産
    (ロ)  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所が一定の業務の用に供する不動産
  B  次の各家屋の価格の2分の1に相当する額を価格から控除する課税標準の特例措置が講じられました。
    (イ)  児童福祉法の規定により市町村の認可を得た者が直接同法に規定する家庭的保育事業の用に供する家屋(当該事業の用以外の用に供されていないものに限ります。)
    (ロ)  児童福祉法の規定により市町村の認可を得た者が直接同法に規定する居宅訪問型保育事業の用に供する家屋(当該事業の用以外の用に供されていないものに限ります。)
    (ハ)  児童福祉法の規定により市町村の認可を得た者が直接同法に規定する事業所内保育事業(利用定員が5人以下)の用に供する家屋(当該事業の用以外の用に供されていないものに限ります。)
    (ニ)  社会福祉法人等が直接生活困窮者自立支援法に規定する認定生活困窮者就労訓練事業(社会福祉事業として行われるものに限ります。)の用に供する不動産
  C 適用期限の延長
    (イ)  次の特例措置の適用期限が平成30年3月31日まで延長されました。
 ・住宅及び土地の取得に係る標準税率(本則4%)を3%とする特例措置
 ・宅地評価土地の取得に係る課税標準を価格の2分の1とする特例措置
    (ロ)  高齢者の居住の安定確保に関する法律に規定するサービス付き高齢者向け住宅に関する次の特例措置の適用期限が平成29年3月31日まで延長されました。
 ・一定の新築貸家住宅に係る課税標準の特例措置
 ・一定の新築貸家住宅の用に供する土地の取得に係る税額の減額措置

(7)  登録免許税の特例の延長と廃止
  @  次に掲げる特例の適用期限が平成29年3月31日まで延長されました。
    (イ)  土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率(本則2%)を1.5%とする軽減措置
    (ロ)  住宅用家屋の所有権の保存登記に対する登録免許税の税率(本則0.4%)を0.15%とする軽減措置
    (ハ)  住宅用家屋の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率(本則2%)を0.3%とする軽減措置
    (ニ)  住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率(本則0.4%)を0.1%とする軽減措置
  A  会社分割に伴う不動産の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置は、適用期限(平成27年3月31日)の到来をもって廃止されました。

(8)  固定資産税の減額措置の見直しと延長
  @  空家等対策の推進に関する特別措置法の規定により所有者等に勧告がされた同法に規定する特定空家等の敷地の用に供する土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の対象から除外されました。
  A  高齢者の居住の安定確保に関する法律に規定するサービス付き高齢者向け住宅である一定の貸家住宅に係る固定資産税の減額措置について、税額を最初の5年間は3分の2を減額していましたが、これを2分の1以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合を減額することとなりました。
 また、その対象資産の新築期限が平成29年3月31日まで延長されました。

3.おわりに
   以上が平成27 年度税制改正のうち、主な項目の概要と改正点となります。
 税制の適用にあたっては、適用要件・適用開始時期・適用期日等を法令でご確認いただき、誤った適用が無いようにご注意ください。
以 上

(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン平成27年6月号執筆分