マイナンバー制度の概要について


税理士 堤 昌彦

 マイナンバー法は、正式には「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といいます。2年前の5月に成立し、今年10月5日に施行され、いよいよ来年1月から運用が開始されます。マイナンバー法の目的は、@行政の効率化A国民の利便性の向上B公平・公正な社会の実現と定められています。

 制度導入時のマイナンバーの利用分野は@社会保障分野A税分野B災害対策分野の3つに限定されています。原則として、それ以外の用途にマイナンバーを利用することはできませんが、上記の3分野以外に、これらに類する事務で地方公共団体が条例で定める事務に利用することができます。具体的には、個人番号カードにICチップが搭載されていますので、例えば印鑑登録証や図書カードなどに利用することが予定されています。

 マイナンバーの利用拡大、つまりマイナンバーの民間利用については、法律施行後3年をめどに、その段階での法律の施行状況をみながら、検討を加えたうえで、必要があると認めた場合に、国民に理解を得ながら所要の措置を講じるとされています。
しかし、実際には法律の施行を待つことなく本年9月3日に改正法が成立し、銀行預金の口座にマイナンバーを付すること及び医療分野におけるマイナンバーの活用など、利用範囲の拡大に向けた法整備が進んでいます。

 今後のマイナンバーのスケジュールですが、今年10月5日以降、順次市町村役場からマイナンバーの通知が届きます。マイナンバーは、生涯にわたって利用する番号ですので、忘失したり、漏えいしたりしないように大切に保管する必要があります。また、法律や条例で決められている社会保障、税、災害対策の手続きで行政機関や勤務先などに提示する以外は、むやみにマイナンバーを他人に教えないようにしてください。

 マイナンバーは住民票を有する個人に通知されますので、日本国籍であっても海外に勤務しているなど日本に住民票がない人には届きません。逆に、外国籍の方であっても、日本に住民票がある場合には通知されます。

 通知方法ですが紙製の「通知カード」を世帯単位で郵送してきます。通知カードには氏名、住所、生年月日、性別の基本4情報とマイナンバーが記載されています。マイナンバーは数字のみで12桁で構成されています。この紙製の「通知カード」を受け取った個人は、市役所等に申請することにより無料で「個人番号カード」の交付を受けることができます。その場合には「通知カード」は返納します。

 ところで、マイナンバーは個人とは別に法人にも法人番号が指定されます。法人番号も今年10月から書面により通知されますが、その通知は国税庁から来ます。法人に対する通知書面には@法人番号A商号又は名称B本店又は主たる事務所所在地の「基本3情報」が記載されています。法人番号は個人と異なりインターネットを通じて公開され、オープンな利用が予定されていますので、現在役所や企業で法人について独自に番号を付しているものについて、法人番号に統一されることが期待されています。

 マイナンバーは社会保障分野、税分野、災害対策分野に利用しますので、社会保険関係事務や源泉徴収事務を行っている会社等の事業者は、来年1月以降従業員等からマイナンバーの提供を受ける必要があります。

 マイナンバーの提供を受けるには本人確認をする必要がありますが、本人確認には「番号確認」と「身元確認」の2つが含まれています。

 個人番号カードの提示があれば番号確認と身元確認が同時にできますので、それで十分ですが、紙製の通知カードの提示の場合には番号確認はできますが身元確認はできませんので、身元確認のために通知カードに加えて運転免許証等の提示が必要になります。

 今後、マイナンバーの提供をする機会が増えてくることが想定されますので「個人番号カード」を取得されたほうが便利ではないかと思われます。

 但し、当初は個人番号カードの申請が集中することが予想されますので、個人番号カードの申請から実際に交付されるまでには、相当の時間を要すると思われます。

 ところで、マイナンバーに関して国民の間ではマイナンバーを含む個人情報、これをマイナンバー法では「特定個人情報」といいますが、この情報が外部に流出するのではないかとの懸念が生じています。地方公共団体等の行政機関から自分のマイナンバーの情報が漏れるのではないかという心配もありますが、それ以外にもマイナンバーを取り扱う民間の会社等から従業員の方々のマイナンバーが流出するというリスクが生じます。このため、マイナンバー法では、特定個人情報を扱うすべての事業者に対して、利用制限や提供制限が付されていますし、安全管理措置を講じることが義務付けられています。

 また、マイナンバー法では、例えば個人情報保護法等の同種の法律に比べて罰則も強化されています。

 最後に、情報提供等記録開示システムの概要について解説します。情報提供等記録開示システムとは、別名マイナポータルといい、インターネット上で自分の個人情報のやりとりの記録が確認できるようになるという制度です。平成29年1月から利用できる予定となっています。

具体的には以下3つのことができます。

・自分の個人情報をいつ、誰が、なぜ提供したかの確認
・行政機関などが持っている自分の個人情報の内容の確認
・行政機関などから提供される、一人ひとりに合った行政サービスなどの確認

また、パソコンがない方等でもマイナポータルを利用できるよう、公的機関への端末設置を行う予定となっています。

心配されるセキュリティ面についてですが、マイナポータルでは、なりすましにより特定個人情報を詐取されることのないように、利用の際は、個人番号カードのICチップに搭載される公的個人認証を用いたログイン方法を採用する予定となっています。

 この機能を使えば、行政機関などが自分の個人情報をどのように使っているかが分かるので、不適切な利用がされていないかどうかの確認ができます。

 マイナンバー制度の概要について解説してきましたが、マイナンバー制度の導入をめぐっては、国民の中に情報の漏えい、なりすまし等の不正利用による被害の多発、国家による個人情報の一元管理の実施等の懸念があることも事実です。

 国は、それらの懸念を払しょくするために制度面やシステム面において保護措置をとっており、我々国民は国の対応を注視しながらこの制度に向き合っていくことが必要ではないかと思います。

以 上

(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン平成27年11月号執筆分