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住宅宿泊事業の定義 |
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住宅宿泊事業法(以下、単に「法」といいます。)第2条3項において、「住宅宿泊事業」とは、「宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算出した日数が1年間で180日を超えないもの」と定義されています。この定義を少し分解して説明します。
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ア |
宿泊料 |
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宿泊料とは、名目だけでなく、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされる、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費なども含まれるとされています。つまり、名目がどのようなものであれ、客観的に宿泊に対する対価と認められるものは宿泊料に該当すると考えられます。
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イ |
住宅 |
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住宅に該当するためには、「設備要件」と「居住要件」という2つの要件を満たすことが必要になります。
設備要件は、法第2条1項1号に定められている要件で、住宅に該当するためには、「当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること」が必要です。
次に、居住要件ですが、これは、法第2条1項2号に定められており、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること」が必要です。この居住要件については、現に自分が居住している自宅の空き室を利用して民泊を行う「家主同居型」と家主が居住しているわけではない「家主不在型」の2つのパターンがあります。
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ウ |
宿泊 |
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宿泊ですが、これは法第2条3項に定義があり、「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。
ここで、宿泊と賃貸借との違いについて触れておきますと、宿泊営業は、@施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること、A施設を使用する宿泊者が、その宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として、営業していることをいいます。逆に、@施設の衛生上の維持管理責任が宿泊者にあり、A宿泊者の生活の本拠となっている場合には不動産賃貸業に該当することになります。
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住宅宿泊事業者にかかる制度 |
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法第3条1項の届出をして住宅宿泊事業を営む者を「住宅宿泊事業者」といいます(法第2条4項)。住宅宿泊事業者は、都道府県知事(保健所設置市の場合は当該市の長)に対し、民泊事業を営もうとする住居ごとに必要事項の届出をする必要があります。
そして、住宅宿泊事業者のうち、家主同居型の場合、住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置として、法第5条から第10条に定められている業務を実施する義務があります。具体的には、衛生確保措置、騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備え付け、標識の掲示などが必要となります。
一方、家主不在型の場合には、家主自らがこのような業務を実施することができませんので、これらの業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないことになります(法第11条)。
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住宅宿泊管理業者にかかる制度 |
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住宅宿泊管理業者とは、住宅宿泊事業者から委託を受けて、報酬を得て、法第5条から第10条までの規定による業務及び住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全業務を行う事業(住宅宿泊管理業務)を営む者のことです(法第2条7項)。住宅宿泊管理業者になるためには、国土交通大臣の登録を受ける必要があります(法第22条1項)
住宅宿泊管理事業者については、法第29条から第40条まで、住宅宿泊管理業の適正な遂行のための措置が定められています。具体的には、名義貸しの禁止、誇大広告等の禁止、不当な勧誘等の禁止など、宅建業法上もあるような規制がされています。
そして、住宅宿泊管理業者は、家主不在型の住宅宿泊事業者に代わって法第5条から10条までの業務を遂行する義務を負うことになります。
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住宅宿泊仲介業者にかかる制度 |
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住宅宿泊仲介業については、利用者のために仲介や代理を行う場合と、住宅宿泊事業者のために仲介や代理を行う場合があります(法第2条8項)。住宅宿泊仲介業者になるためには、観光庁長官の登録が必要となります(法第46条1項)。
住宅宿泊仲介業者については、法第53条から第60条まで、住宅宿仲介業の適正な遂行のための措置が定められています。具体的には、名義貸しの禁止、住宅宿泊仲介契約に関する約款の届出、料金の公示、不当な勧誘等の禁止などの規制がされています。
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