最高裁平成17年12月16日判決(最高裁判所裁判集民事218号1239頁)は、「通常損耗が生ずることは賃貸借の締結時に当然予定されており、通常は減価償却費や修繕費等の必要経費を折り込んで賃料が定められるのであって……特約がある場合を除いて賃借人は通常損耗の回復義務を負わない」と判示しています。また、来年4月1日から施行される改正民法においても、従前の判例理論を明文化して、賃借人は原則として通常損耗の原状回復費用を負担しなくても良い旨が明記されました(改正民法621条)。
ところで、上記最高裁判決は「特約がある場合を除いて」と述べています。それでは、通常損耗についても賃借人が原状回復費用を負担する旨の特約を設けた場合、それは常に有効となるのでしょうか。この点に関する裁判例を紹介します(東京地裁平成29年4月25日判決〔RETIO 112号124頁〕)。 |