2−1 裁判例(東京地判H28.8.19 RETIO 113-140) |
(1) |
事案の概要 |
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ア) |
平成14年9月,賃借人Xは,賃貸人Yの所有する昭和47年築のアパートの1室(本件アパート)を賃借した。その後,平成26年8月,Xは賃貸借契約を解約し本件アパートを明け渡した。 |
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イ) |
XはYに対し,敷金等計219,164円の支払を求めて提訴した。 |
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ウ) |
これに対し,Yは,以下のように主張してXの請求を争った。
即ち,本件アパート内部は相当に荒れ果てていた,壁・天井の塗装,便器取替,クッションフロア取替,襖張替,ルームクリーニングその他(ただし,一部はXの負担割合を50%に減縮し,他はXの100%負担)の費用として,Xが負担すべき原状回復費用は計435,750円である。
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(2) |
裁判所の判断
本件は,上記のYの主張の当否が実質的な争点である。
裁判所は,結論として,Yの主張のうち,一部につきXの責任を認め,Xが負担すべき原状回復費用は計68,153円(諸経費・消費税を含む)であると判断した。
裁判所の判断内容は,概要,以下のとおりである(以下の金額は税別)。
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@ |
襖張替のうちXが責任を自認した2枚分20,800円をX負担と認める。 |
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A |
ルームクリーニング35,000円については,Xが日頃の清掃を十分行っていなかったとして,X負担と認める。 |
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B |
壁・天井の塗装については,5,280円をX負担と認める。理由は以下のとおり。
即ち,Yは,壁及び天井の塗装につき,全面的な塗り替えが必要であることを前提として,Xがその費用の50%を負担すべきであると主張するが,そもそも,本件アパートが築後約42年を経過していること,Xが本件居室を約12年間にわたって賃借していたこと等からすると,通常使用がされていた場合の本件居室の塗装の残存価値は,塗装の再施工に要する費用(105,600円)の10%と見るのが相当であるところ,Xの使用状況に照らすと,その半分である5%についてXの負担とするのが相当である。 |
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C |
クッションフロア取替についても,通常使用がされていた場合の残存価値は,再施工に要する費用(28,000円)の10%と見るのが相当であるところ,Xの使用状況に照らすと,その半分である5%についてXの負担とするのが相当とし,1,400円をX負担と認める。 |
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D |
以上のほかは,Xの故意過失により損耗したとは認められないなどとして,Xの責任を否定した。 |