2.事案の概要
買主X(原告)は、平成27年11月、売主Y(被告)との間で、鉄筋コンクリート造5階建ての共同住宅(賃貸用マンション)につき、売買契約を締結し、同年12月に引渡を受けました。
本件契約では、@売主は、引渡し後3か月以内に発見された雨漏り、シロアリの害、建物構造上主要な部位の木部の腐食、給排水設備の故障についてのみ、買主に対して責任を負う、A瑕疵が発見された場合、売主は、自己の負担において、その瑕疵を修復しなければならない。なお、買主は売主に対し、瑕疵の修復以外、損害賠償の請求をすることはできないと定められていました。
平成28年1月、5階の一室の入居者が退去し、立会い業者が室内を確認したところ、天井に染みがあることを発見し、壁紙を剥がしてコンクリートの天井が湿っていることを確認しました。Xは、Yに対し、平成28年2月に雨漏りの事実を伝えましたが、Yは、本件建物を所有当時、本件居室の入居者から、雨漏りについて苦情はなかったなどとして、修繕工事に応じることはありませんでした。
また、本件建物は、セントラル給湯方式を採用していましたが、平成28年2月、入居者から、お湯が出ないとの苦情が入り、給湯器の交換をXの費用で行いました。しかし、同年3月、入居者からお湯の温度が低いとの苦情が入ったため、調査したところ、循環ポンプの力が弱まっていることが判明し、同年4月、Xは、循環ポンプ及び給湯管の工事を行いました。これらの工事費用に関しても、Yは、経年劣化であるなどとして、支払うことはありませんでした。
そこで、Xは、Yに対し、雨漏り及び給湯設備の瑕疵があったとして、売買契約の瑕疵担保責任に基づき、原状回復工事費用、防水工事費用等として、675万円余の支払を求めて提訴しました。