府内の平均は前年比0.9%減で8年ぶりに下落に転じました。新型コロナウィルス感染拡大に伴い、インバウンド(訪日外国人観光客)の減少が長期化したことや、度重なる飲食店への営業時間短縮要請が続いたことなどが大きく影響していると見られています。税務署ごとの最高路線価でみても、府内31地点中、上昇したのは2地点にとどまり、昨年の28地点から大幅な減少となっています。
大阪の最高路線価は北区角田町の「阪急うめだ本店前」の1,976万円/uであり、1984年から38年連続でトップではあったものの、対前年比はマイナス8.5%となりました。また、ミナミでも中央区心斎橋筋2丁目の「心斎橋筋」は下落率が全国ワーストの26.4%となるなど、大阪市都市部を中心に下落が目立っています。
一方、高槻市、豊中市などの北摂地域においては、主にファミリー向けの新築マンションの取引が好調であり、路線価は上昇傾向にあります。コロナ禍での「テレワーク」が進み、大阪・京都への交通利便性に加え、住環境や居住の快適性などを尊重する動きが出始め、ファミリータイプのマンションへの需要が高まったと見られます。(【表3】参照)
なお、今後の地価の推移によっては、昨年分と同様に、路線価等を減額補正(下方修正)する措置を導入する可能性もあるとみられています。
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国土交通省が四半期ごとに調査発表している、主要都市の高度利用地地価動向報告「地価LOOKレポート」によると、最新の調査(第54 回令和3 年第1 四半期の動向)では、令和3年第1四半期(令和3年1/1〜令和3年4/1)の主要都市の高度利用地等100地区における地価動向は、下落が27地区(前回38)、横ばいが45地区(前回47)、上昇が28地区(前回15)となり、前期と比較すると、下落地区数及び横ばい地区数が減少、上昇地区数が増加しており、地価の回復傾向が伺えています。
住宅地では、マンションの販売状況が堅調な中、事業者の素地取得の動きが回復している地区が増加しており、商業地では、法人投資家等による取引の動きが戻り、横ばい・上昇に転じた地区が見られています。また、新型コロナウィルス感染症の影響により、店舗等の収益性が低下し下落が継続している地区があるものの、下落地区数は減少しています。大阪においても、今年4 月下旬に道頓堀のランドマークでもある「住友商事心斎橋ビル」をドイツの不動産投資会社が取得し話題となったように、海外の投資マネーの動きも出始めているようです。
今のところ、新型コロナウィルスが不動産に与えた影響としては、主に商業地とオフィス需要に限定され、住宅地については一部郊外で人気が高まった地域があるものの全体的には大きな影響はありません。
大阪においては、2025年開催の大阪万博や2028年開業予定の大阪IR(統合型リゾート施設)による経済波及効果が期待されてはいますが、8 月に緊急事態宣言が再発令される等、コロナウィルス感染収束の見通しは立たず先行きは未だ不透明であり、今後については海外を含め、感染状況・経済状況に注視が必要と思われます。
(参考資料)
国税庁HP
大阪国税局HP
国土交通省「地価LOOKレポート」