令和4年地価公示価格の概要について


不動産鑑定士  深澤 俊男


1.はじめに

 国土交通省は、令和4年3月23日に、令和4年地価公示結果(価格時点:1月1日)を公表しました。
 地価公示価格は、国土交通省土地鑑定委員会が委嘱した評価員である全国の不動産鑑定士の鑑定結果を基に公表する各年1月1日時点の土地の価格です。この制度は1969年に制定された「地価公示法」に基づいたもので、1970年から毎年実施されています。また、都道府県が実施している地価調査(価格時点:7月1日)とともに、土地取引等に対して指標を与えるとともに公共事業の用に供する土地に対する補償金額の算定等に資すること等により、適正な地価の形成に寄与することを目的としています。
 さらに、この地価公示価格と都道府県地価調査価格は相続税や贈与税の算定基準として国税庁が7月に発表する「相続税路線価」や市町村が課税主体である「固定資産税の評価」を定めるための評価作業の主要な指標となっています。
 令和4年地価公示における調査地点は全国で市街化区域20,557地点、市街化調整区域1,379地点、その他の都市計画区域4,044地点、都市計画区域外の公示区域20地点の計26,000地点となっています(うち、福島第一原子力発電所事故の影響による7地点は調査を休止しています)。なお、全ての標準地の代表性、中庸性、安定性、確定性等について点検を行った結果、適正と認められた25,736地点を継続の標準地として設定し、標準地の状況の変化に伴い前記条件に合致しなくなった264地点については選定替をおこなっています。

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2.全国の地価動向

 国土交通省ホームページを参考としてまとめたものが以下となります(参考資料【表2】)。
 (なお、令和4年の変動率とは、令和3年1月1日から令和4年1月1日までの一年間を前提としていますのでご注意ください。)

  • 全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。工業地は6年連続の上昇であり、上昇率が拡大しました。
  • 三大都市圏平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。工業地は8年連続の上昇であり、上昇率が拡大しました。
  • 地方圏平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。工業地は5年連続の上昇であり、上昇率が拡大しました。

【住宅地】
  • 東京圏の平均変動率は0.6%と2年ぶりに上昇に転じました。
  • 大阪圏の平均変動率は0.1%と2年ぶりに上昇に転じました。
  • 名古屋圏の平均変動率は1.0%と2年ぶりに上昇に転じました。
  • 地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市、以下同)の平均変動率は5.8%と9年連続の上昇であり、上昇率は拡大しました。地方四市を除くその他の地域の平均変動率は▲0.1%と2年連続に下落ですが、下落率は縮小しました。
【商業地】
  • 東京圏の平均変動率は0.7%と2年ぶりに上昇に転じました。
  • 大阪圏の平均変動率は0.0%と横ばいに転じました。
  • 名古屋圏の平均変動率は1.7%と2年ぶりに上昇に転じました。
  • 地方圏のうち、地方四市の平均変動率は5.7%と9年連続の上昇であり、上昇率は拡大しました。地方四市を除くその他の地域の平均変動率は ▲0.5%と2年連続の下落ですが、下落率は縮小しました。
【工業地】
  • 東京圏の平均変動率は3.3%と9年連続の上昇、大阪圏の平均変動率は2.5%と7年連続の上昇で、いずれも上昇率は拡大しました。名古屋圏の平均変動率は1.6%と2年ぶりに上昇に転じました。
  • 地方圏のうち、地方四市の平均変動率は7.4%と9年連続の上昇で、上昇率は拡大しました。地方四市を除くその他の地域の平均変動率については0.8%と4年連続の上昇で、上昇率が拡大しました。

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3.大阪府内の動向

 国土交通省及び大阪府地価だよりのホームページを参考としてまとめたものが以下となります(参考資料【表3】〜【表7】)。
 (なお、令和3年の変動率とは、令和2年1月1日から令和3年1月1日までの一年間を前提としていますのでご注意ください。)

 ■大阪市内の住宅地
 大阪市では、0.6%上昇(前年0.1%下落、以下同)。全24 区のうち、都島区、福島区、天王寺区、城東区、阿倍野区、淀川区及び中央区の7区で上昇が継続し、西区、東淀川区、東成区、旭区、鶴見区及び北区の6区で横ばいから上昇、此花区、港区、浪速区、生野区、住吉区、西成区及び平野区の7区で下落から上昇となりました。また、西淀川区及び住之江区では下落から横ばいとなりました。一方、大正区及び東住吉区で下落が継続しました。

 ■大阪市内の商業地
 大阪市では、1.1%下落(4.4%下落)。全24 区のうち、東成区、城東区及び鶴見区の3区は横ばいから上昇、都島区、此花区、港区、大正区、西淀川区、東淀川区、旭区、西成区、住之江区及び平野区の10区で下落から上昇となった。また、生野区、淀川区で下落から横ばいとなりました。一方、福島区、西区、天王寺区、浪速区、阿倍野区、住吉区、東住吉区、北区及び中央区の9区で下落が継続しています。
 梅田地区では、店舗、ホテル等の収益性の低下が見られるものの、人流は回復傾向にあり、下落率は縮小しました。なお、オフィスは比較的堅調です。
 心斎橋・なんば地区では、新型コロナの影響による国内外の観光客減少から店舗、ホテル等の需要が減退しており、インバウンドへの依存度が大きかった地点ほどその影響は大きくなっています。ただし、人流は回復傾向にあり、下落率は縮小しました。

 ■大阪市外の商業地
 堺市では、2.3%上昇(1.6%下落)。全7 区のうち、中区、南区は横ばいから上昇、堺区、東区、西区及び北区で下落から上昇となりました。また、前年選定替の美原区も上昇となりました。
 北大阪地域では、北大阪急行延伸部沿線の箕面市を始め、豊中市、池田市、高槻市、茨木市、島本町で上昇が継続、吹田市、摂津市で下落から上昇となりました。
 東大阪及び南大阪地域では、枚方市で上昇が継続、八尾市、寝屋川市、門真市及び交野市で横ばいから上昇、守口市、泉佐野市、和泉市で下落から上昇となりました。富田林市、柏原市、藤井寺市、泉南市、大阪狭山市及び阪南市で横ばいが継続、貝塚市、羽曳野市、高石市及び熊取町で下落から横ばいとなりました。松原市で横ばいから下落となり、その他の市では、下落が継続しています。


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4.大阪府内の特徴的な動向

 国土交通省HPなどを参考にして、大阪府内の特徴的な動向を示す具体的地点をまとめたものが以下となります。

 ■最高価格地の地価動向 [大阪市梅田地区]
(価格順位大阪圏1位)
●大阪北5-28 [商業地] 大阪駅近接 22,100,000円/u (3.5%下落)
 一等地におけるオフィス需要は比較的堅調であり、人流は回復傾向ですが、新型コロナの影響により、店舗・ホテルの収益性が低下しているため、地価の下落が継続しています。

 ■インフラ整備、再開発等の進展等[大阪府箕面市船場地区]
(新駅開業予定地周辺)
●箕面−19(住宅地)千里中央駅2.1km 240,000円/u(4.3%上昇)
●箕面5-4(商業地)千里中央駅1.6km 570,000円/u(7.5%上昇)
 北大阪急行延伸で設置される新駅から徒歩圏内の環境が良好な住宅地域では、根強い需要により、地価の上昇が継続しています。
 また、新駅開業予定地周辺では、再開発が進行中であり、新駅設置・駅前地区計画等による整備への期待感の高まりから、店舗・事務所需要及びマンション用地需要が旺盛であり、地価の上昇が継続しています。

 ■観光地の地価動向[大阪府大阪市中央区道頓堀地区]
(大阪中央5−2:価格下落率(商業地)全国3位、大阪中央5−19:同1位)
●大阪中央5-2[商業地]なんば駅230m 18,800,000円/u (10.9%下落)
●大阪中央5-19[商業地]なんば駅260m 4,900,000円/u (15.5%下落)
 人流は回復傾向にありますが、新型コロナの影響により、インバウンドを中心とした観光需要が減退し、物販及び飲食店舗の収益性が低下しているため、地価の下落が継続しています。

 ■物流施設等の需要の高まり[大阪府枚方市]
(価格上昇率(工業地)全国9位)
●枚方9-1[工業地]樟葉駅3.5km 95,000円/u(17.3%上昇)
 新名神高速道路の全線開通を控え、アクセス向上への期待、関連する周辺道路の整備の進展及び近畿圏内における相対的割安感から、第二京阪道路インターや国道1号周辺の物流施設用地に対する需要は旺盛であり、地価の上昇が継続している。


(参考資料)
 国土交通省HP 土地水資源局 地価調査課 発表資料
 大阪府地価だより 令和4年3月23日発行 第94号 

(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン令和4年5月号執筆分