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80歳で年金暮らしのXは、マンション管理費を滞納していたところ、平成28年8月29日、管理組合から自宅マンション(以下、「本件不動産」)を差し押さえられた。管理費の滞納分は70万円であったが、Xは他にも信用金庫からの借入金200万円、年金を担保とした借入金30万円の債務を抱えていた。
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Xは住み慣れた本件不動産に住み続けたいという思いから、9月20日、不動産担保融資のダイレクトメールを送ってきたY1(不動産に関するコンサルティング会社)に電話をし、同月22日、Y1の事務所にて融資申込書を作成した。
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9月26日にXがY1事務所を訪問したところ、融資の審査が通らなかったと告げられ、同じビルにあるY2(宅建業者)の事務所に連れて行かれた。Y1、Y2は、Xに「債務を清算したうえで手元に100万円程度の資金を残すには、融資額を500万円にするのがよい」と言い、Xに「売却希望価格500万円、売却後も半年程度居住希望」とする不動産売却申込書を作成させるとともに、代金500万円で本件不動産をY2に売却する旨の売買契約書に署名押印させた。
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9月28日、XはY2の指示で法務局に出向き、よくわからないまま登記手続関係書類を作成させられ、同月29日には、診療所で「認知症は認めません」との診断書を出してもらいY2に提出させられた。
同月30日、Xからの申し入れにより、Y2から不動産売買代金の一部名目で現金15万円がXに交付された。
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10月20日、Y2はXを呼び出し、9月26日付のXとY2間の不動産売買契約を解除する旨の解除証書に押印させるとともに、Y2事務所と同じ階に事務所を持つY3(宅建業者、Y2従業員が代表取締役)に本件不動産を金500万円で売却する旨の不動産売買契約書と、賃料10万円、敷金礼金各10万円と定めた期間3ヶ月の定期住宅賃貸借契約書に署名押印させた。
そのうえで、Y3からXに、売買代金から敷金礼金合計20万円と9月30日にY2から支払われた15万円を控除した残金が支払われたが、Xの債務(競売手続費用や弁護士・司法書士の費用、税金含む)を全て支払うと、手元には約20万円しか残らなかった。
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Xは11月11日、Y1の事務所に呼び出され、Y3との間の定期住宅賃貸借契約を、期間2年(更新あり)の通常の賃貸借契約に変更させられた。
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Y3は、11月17日、本件不動産を代金1250万円でAに売却し、Aは12月28日に代金1980万円でBに売却した。XはBに月額10万円の賃料を支払って、本件不動産に居住している。
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Xは、Yらが共謀して本件不動産をだまし取ったとして損害賠償を求めて提訴した。
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