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本件マンションは住居部分と店舗部分が併存するいわゆる複合用途型のマンションです。 原告Xは、イタリアンレストランを開業する目的で本件マンション地下1階の専有部分(以下「本件区分建物」といいます)を賃借した者です。 被告Y1は、本件区分建物の区分所有者です。 被告Y2は、本件マンションの管理組合です。
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本件マンションの管理規約17条は「区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え…を行おうとするときは、あらかじめ、専有部分修繕等工事申請書により理事長…にその旨を申請し、専有部分修繕等工事承認書による承認を受けなければならない」と定めています。 また、管理規約に付属する店舗使用細則2条は「用途は店舗又は事務所として使用するものとし、次に掲げる用途に供しないこと。但し、適切な処置が講じられるなどして管理組合が特に支障がないと認めた場合は、この限りでない」とし、その一つとして「振動、粉塵、臭気等を発生させ、住環境に悪影響を及ぼすおそれがあるもの」を挙げています。
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Xはイタリアンレストランを開業する目的でY1と賃貸借契約を締結し、本件区分建物を賃借しました。その際、株式会社Bが双方からの委任により賃貸借契約を仲介しました。Bの代表取締役は、Xが開業する店舗の臭気が本件マンションの区分所有者から問題視されるとは考えていなかったため、Xに対し、排気は直排気でよいと思うと説明し、臭気が原因で内装工事につきY2(管理組合)の承認が得られない可能性があることは説明しませんでした。
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Xは内装工事を業者に発注した後、Y2(管理組合)に対し、同工事の承認を求めました。Y2の理事会から説明を求められ、Xは「肉を焼き、ニンニクは使うが、臭気については気を配る」などと説明しましたが、Y2の理解を得られず、継続審議となりました。その後、Xはセラミック脱臭フィルターを設置する方針を決め、その旨をY2(管理組合)に伝えました。しかし、大きさの関係で同脱臭フィルターを設置できないことが判明したため、Xは代わりに厨房排気消臭装置を設置することに変更し、その旨をY2に報告しました。Y2は、区分所有者の意見を聴くための臨時総会を開催し、条件付き承認案と不承認案の双方を付議した結果、不承認案が賛成多数で可決されました。そこで、Y2(管理組合)は内装工事を不承認とする旨をXに通知しました。 これにより、Xはイタリアンレストランの開業を断念し、本件賃貸借契約及び内装工事の請負契約をそれぞれ合意解除しました。
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Xは、Y2(管理組合)の不承認決議は不法行為に当たるとして損害賠償請求をしました。また、Y1に対しては、賃貸借契約の締結に当たり必要な説明をしなかったことが債務不履行に当たるとして損害賠償請求をしました。
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Xなお、本件賃貸借契約の約10年前、本件マンションの隣地建物に入居していた(本件とは別の)イタリアンレストランの臭気をめぐって本件マンションの入居者から苦情が出たことにより、同レストランが閉店したことがありました。その後、同所にインド料理店が入居しましたが、本件マンション側との協議により、排気ダクトを本件マンションとは反対側の道路へ延長する工事が実施されたという事情も存在しました。
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