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買主X(不動産賃貸を目的とする法人)は、平成29年6月1日、宅建業者である売主Yとの間で、投資用物件として、首都高速道路の沿道にある東京都内の10階建てのビルの売買契約を締結した。
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本物件の売買代金は、3億4400万円であり、売主Yが買主Xに示したレントロールでは、満室想定での賃料収入が月額213万円、表面利回りが7・44%とされていた。
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本件ビルの屋上には、広告看板掲出スペース(以下、「本件工作物」という)が東西南北に4面あり、A社(売主Yの前所有者)とA社の関連会社が、月額55万円で買主Xから賃借することが決まっていた(この55万円は、前記想定賃料213万円に含まれ、全体の25%余りを占める)。
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1年後、A社は看板掲出契約を解約した。買主Xが広告代理店を通じ、新たな広告主を募集しようとしたところ、首都高速道路の沿道に立地する本件建物屋上の広告看板掲出は、条例により禁止されており、本件工作物を広告掲出目的で他人に貸すことは事実上困難であることが発覚した。
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買主Xは、宅建業者である売主Yが、本件工作物の「賃貸能力」につき、正確な内容を説明すべき信義則上の義務を負っていたのに、本件工作物における規制につき調査したうえで説明せず、本件工作物につき賃料が得られると虚偽の説明をしたことにより損害を被ったとして、不法行為責任に基づき、9032万円の損害賠償を求めて売主Yを提訴した。
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