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T はじめに
令和6年度税制改正では、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和し、物価上昇を十分に超える持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す観点から、所得税・個人住民税の定額減税の実施や、賃上げ促進税制の強化等の施策のための改正が行われました。また、子育て支援税制として、扶養控除の見直しや住宅ローン控除の拡充などもなされています。
今回は、令和6年度税制改正の中でも、住宅・不動産に関連する税制について主な改正点を解説いたします。
U 住宅・不動産関連税制の主な改正点等
1 住宅ローン控除 (1)子育て支援策
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年齢40 歳未満で配偶者を有する者、年齢 40 歳以上で年齢 40 歳未満の配偶者を有する者又は年齢 19 歳未満の扶養親族を有する者(以下、「子育て特例対象個人」という。)が、認定住宅等の新築等をして令和6年1月1日 から同年 12 月 31 日までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額を、認定住宅は 5,000 万円、 ZEH水準省エネ住宅は 4,500 万円 、省エネ基準適合住宅は4,000 万円として、本特例の適用ができることとされました。
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A |
子育て特例対象個人が、その者の所有する居住用の家屋について、事故防止のための工事や対面式キッチンへの交換工事など一定の子育て対応改修工事をして、当該居住用の家屋を令和6年4月1日から同年 12 月 31 日までの間に居住の用に供した場合には、その子育て対応改修工事に係る標準的な工事費用相当額(250 万円を限度)の10%に相当する金額をその年分の所得税の額から控除できることとされました。ただし、その年分の合計所得金額が 2,000 万円を超える場合には適用がありません。
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(2)延長その他
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認定住宅等の新築又は認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得に係る床面積要件の緩和措置(合計所得金額が1000万円以下であれば、床面積が40u以上)について、令和6年 12 月 31 日以前に建築確認を受けた家屋についても適用できることとされました。
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A |
既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除の適用期限が2年延長(令和7年12月31日まで)されました。
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B |
既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除について、その適用期限が2年延長(令和7年12月31日まで)されましたが、新たに次の措置が講じられています。
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ア |
本税額控除の適用対象者の合計所得金額要件を 2,000 万円以下(現行:3,000 万円以下)に引き下げる。
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イ |
本税額控除の適用対象となる省エネ改修工事のうち省エネ設備の取替え又は取付け工事について、エアコンディショナーに係る基準エネルギー消費効率の引上げに伴い、当該工事の対象設備となるエアコンディショナーの省エネルギー基準達成率を107%以上(現行:114%以上)に変更する。
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C |
認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除について、適用対象者の合計所得金額要件を 2,000 万円以下(現行:3,000 万円以下)に引き下げた上、 その適用期限が2年延長(令和7年12月31日まで)されました。
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なお、令和4年度の改正ではありますが、令和6年1月1日以後に建築確認を受けた住宅用家屋(登記簿の建築日付が令和6年6月30日以前のものを除く。)又は建築確認を受けない住宅用家屋で登記簿の建築日付が令和6年7月1日以降のものについては、一定の省エネ基準を満たさなければ、住宅ローン控除の適用はないとされていますのでご注意ください。
2 特定居住用財産を譲渡した場合の特例
(1) 特定居住用財産の買換えの特例
適用期限が2年延長(令和7年12月31日まで)されました。
(2) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等
適用期限が2年延長(令和7年12月31日まで)されました。
3 固定資産税
(1) 土地に係る固定資産税等の負担調整措置等
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宅地等及び農地の負担調整措置については、令和6年度から令和8年度までの間、商業地等に係る条例減額制度及び税負担急増土地に係る条例減額制度を含め、現行の負担調整措置の仕組みが継続されます。
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A |
据置年度において簡易な方法により価格の下落修正ができる特例措置が継続されます。
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(2) |
新築の認定長期優良住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限が2年延長(令和8年3月31日まで)されました。
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(3) |
耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修を行った一定の住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限が2年延長(令和8年3月31日まで)されました。
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4 相続税・贈与税
(1) |
住宅取得等資金贈与に係る贈与税の非課税措置について、1,000万円までの上乗せ措置の対象となる「省エネ等住宅」の省エネ基準が、令和6年1月1日以後の贈与からは、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上(改正前は、断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上)と引き上げられ、適用期限が3年間延長(令和8年12月31日まで)されました。
上記の等級引上げは、住宅で消費する一次エネルギー消費量を抑えつつ再生エネルギー等を活用することで、一次エネルギー消費量の収支がゼロになることを目指すZEH水準に合わせたもので、前述の1(1)@の子育て支援策の住宅ローン控除のうち、借入限度額が4,500万円となる「ZEH水準省エネ住宅」の要件と同じです。
なお、経過措置として、その家屋の省エネ性能が断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上であり、かつ令和5年12月31日以前に建築確認を受けているもの、又は令和6年6月30日以前に建築されたもののいずれかに該当すれば、改正後の省エネ性能の要件を満たさなくても「省エネ等住宅」とみなされます。
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(2) |
特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度特例の適用期限が3年延長(令和8年12月31日まで)されました。
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5 登録免許税
住宅用家屋の所有権の保存登記若しくは移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記、特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等、認定低炭素住宅の所有権の保存登記等、特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記に対しての登録免許税の税率軽減措置の適用期限が3年延長(令和9年3月31日まで)されました。
6 印紙税
不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限が3年延長(令和9年3月31日まで)されました。
7 不動産取得税
(1) |
住宅及び土地の取得に係る不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置の適用期限が3年延長(令和9年3月31日まで)されました。
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(2) |
不動産取得税について、新築住宅を宅地建物取引業者等が取得したものとみなす日を住宅新築の日から1年(本則6月)を経過した日に緩和する特例措置の適用期限が2年延長(令和8年3月31日まで)されました。
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(3) |
新築住宅特例が適用される住宅の用に供する土地に係る不動産取得税の減額措置(床面積の2倍(200 uを限度)相当額等の減額)について、土地取得後から住宅新築までの経過年数要件を緩和する特例措置の適用期限が2年延長(令和8年3月31日まで)されました。
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(4) |
新築の認定長期優良住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限が2年延長(令和8年3月31日まで)されました。
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V おわりに
以上が、令和6年度税制改正のうち不動産関連税制の主な項目についての説明となります。
延長されたものも多くありますが、税制の適用にあたっては、適用要件・適用開始時期・適用期日等を法令等でご確認いただき、誤った適用が無いようにご注意ください。
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(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン令和6年6月号執筆分 |
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