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被告Yの母は、昭和35年11月に本件土地を購入し、昭和36年9月に同土地上に自宅建物を新築しました。 |
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被告Yは、昭和58年1月、前記(1)の建物を建て替えるため、N不動産株式会社に対し、本件土地の敷地調査を依頼しました。同社は敷地調査を実施した上、本件土地には浄化槽及び大谷石の擁壁等の地中埋設物が存在する旨の敷地調査報告書を作成しました。
被告Yは、昭和59年5月、N不動産株式会社に対し、前記(1)の建物の解体工事、上記浄化槽及び大谷石の擁壁等の地中埋設物の撤去工事及び自宅建物の新築工事を発注しました。 |
(3) |
原告は、平成30年7月、被告Yから、宅地建物取引業者である被告会社の仲介により、本件土地及び前記(2)の建物を5億1000万円で購入し、同年8月31日、引渡しを受けました。売買契約書には、被告Yは、本件土地の隠れた瑕疵について、引渡完了日から3か月以内に原告から請求を受けたものについて、修復に限り責任を負う旨の条項が存在しました。
被告Yは、売買契約書に添付された物件状況等報告書の「敷地内残存物等」の項目において、「無・有・不明」との選択肢のうち「無」に◯を付けました。なお、物件状況等報告書には「敷地内残存物等」の例として「旧建物基礎・建築廃材・浄化槽・井戸」が列挙されていました。 |
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原告は、平成31年3月ころ、前記(2)の建物の解体工事及び自宅建物の新築工事を発注しました。解体工事実施中の令和元年8月、本件土地の地中から、コンクリート製の枡及び大谷石の擁壁が発見されました。 |
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原告は、売主である被告Yは「@昭和58年に作成された敷地調査報告書により、本件土地には浄化槽及び大谷石の擁壁があることを把握していたのだから、売買契約書に添付された物件状況等報告書を作成する際にも本件土地に敷地内残存物があると認識していたはずである、A仮にそうでなかったとしても、被告Yの供述によれば、物件状況等報告書を作成した際、本件土地に敷地内残存物はないとの確証は有していなかったはずである、Bしたがって、被告Yは、物件状況等報告書の「敷地内残存物等」の中の「無・有・不明」との選択肢のうち「不明」を選択して告知すべき義務を負っていた」として、「無」を選択した被告Yは過失による不法行為責任を負うと主張しました。
また、原告は、被告会社は、宅地建物取引業者として、過去に浄化槽及び大谷石の擁壁が存在した本件土地の売買を仲介するに際し、敷地内残存物がある可能性を察知して、売主である被告Yに事実と異なる告知をさせないようにすべき注意義務を負っていたにもかかわらず、これを怠ったとして、被告会社は過失による不法行為責任を負うと主張しました。
以上の理由により、原告は、被告Y及び被告会社に対し、地中埋設物の撤去費用等の損害賠償を請求しました。 |
(6) |
これに対し、被告Yは、そもそも昭和58年に作成された敷地調査報告書の記載内容自体を把握していなかったとした上で、仮に同報告書に記載された浄化槽及び大谷石の擁壁が売買契約後に発見されたものと同一のものであるとすれば、昭和59年にこれらの撤去工事を発注したのであるから、地中埋設物はないと認識していたと評価すべきであると反論しました。
また、被告会社は、本件土地の売買を仲介した際、コンクリート製の枡及び大谷石の擁壁は地中にあるので目視で観察して把握できるものではなかったことに加え、被告Yから本件土地に地中埋設物があるとの話は一切聞いておらず、原告からも本件土地の地中埋設物に関する調査依頼を受けていなかったことからすれば、被告会社には注意義務違反は無いと反論しました。 |