令和6年第3四半期(R6.7.1〜R6.10.1)
主要都市の高度利用地地価動向報告〜地価LOOKレポート〜の結果


不動産鑑定士  深澤 俊男


1 はじめに

 国土交通省は、令和6(2024)年11月に、「令和6年第3四半期主要都市の高度利用地地価動向報告〜地価LOOKレポート〜」の結果を公表しました。
 この主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)とは、主要都市の地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等の地区について、四半期毎に地価動向を把握することにより先行的な地価動向を明らかにするもので、平成19(2007)年第4四半期から継続して公表されています。調査内容は、鑑定評価員(不動産鑑定士)が調査対象地区の不動産市場の動向に関する情報を収集するとともに、不動産鑑定評価に準じた方法によって地価動向を把握し、その結果を国土交通省において集約します。また、各地区の不動産関連企業、金融機関等の地元不動産関係者にヒアリングを行った結果が掲載されています。
 対象地区は、三大都市圏、地方中心都市等において特に地価動向を把握する必要性の高い地区となっており、平成26(2014)年第4四半期までは東京圏65地区、大阪圏39地区、名古屋圏14地区、地方中心都市等32地区の合計150地区でしたが、平成27(2015)年第1四半期からは東京圏43地区、大阪圏25地区、名古屋圏9地区、地方中心都市等23地区の合計100地区となりました。また、令和4(2022)年第1四半期からは東京圏35地区、大阪圏19地区、名古屋圏8地区、地方圏18地区の計80地区となり、現時点に至っています。
 これを用途別に分けますと、高層住宅等により高度利用されている住宅系地区が22地区、店舗、事務所等が高度に集積している商業系地区が58地区設定されています。
 なお、従来から実施されている、地価公示や都道府県地価調査に比べ、その対象範囲は限定的で、対象地点は少ないですが、地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等のみを抽出・選定し、また速報性を重視したもので、その内容や役割がやや異なっています(【表1】参照)。


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2 全国の地価動向

 国土交通省HPによると、以下のようにまとめられています。
 令和6(2024)年第3四半期(7/1〜10/1)の主要都市・高度利用地等80地区における地価動向は、前回と同様、全80地区が上昇となり、横ばい、下落の地区はありませんでした。また、これは令和3年以降13期連続しており、上昇基調の継続傾向がみられます(以上【表2】参照)。


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 なお、前述のとおり、この80地区は用途別に住宅地22地区、商業地58地区に分けられます(【表3】参照)。


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 その用途別の特徴としては、住宅地では10期連続で22地区全てにおいて上昇しています。なお、同変動率区分が「上昇(0〜3%)」から「上昇(3〜6%)」に移行した地区が1地区ありましたが、その他の地区では変動率区分に変化はなく、緩やかな上昇傾向が続いています。商業地では、3期連続で58地区全てにおいて上昇となり、変動率区分に変化はありませんでした。
 ちなみに、上昇傾向を維持している主な要因としては、用途別に以下のような理由が挙げられます。
 住宅地では利便性や住環境の優れた地区におけるマンション需要に引き続き堅調さが認められたことなどから上昇傾向が継続したことが挙げられます。一方、商業地では再開発事業の進展や国内外からの観光客の増加もあり、店舗・ホテル需要が堅調であったこと、また、オフィス需要も底堅く推移したことなどから上昇傾向が継続したことが挙げられます。


3 圏域別・用途別の地価動向

 国土交通省HPによると、以下のようにまとめられています。


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 まず、圏域別の地価動向については、地方圏(18地区)を除く三大都市圏(62地区)のうち東京圏(35地区)では上昇地区が35地区、横ばい地区・下落地区がともに0地区でした。また、大阪圏(19地区)も、上昇地区が19地区で全ての地区が上昇しており、名古屋圏(9地区)も全ての地区で上昇を示しています。
 なお、これまでにおける大阪圏の上昇・横ばい・下落の地区数一覧を下記の【表5】に示しております。大阪圏では、令和3年度第3四半期から12期連続ですべての地区で上昇を継続しています。


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4 大阪府内の地価動向

 大阪府内には令和6年第3四半期において、以下の10地区が設定されています(【表6】参照)。


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 これら大阪府内の10地区における直近の傾向は、全ての地区について上昇傾向がみられ、直近4四半期においてその傾向が継続しています。(【表7】参照)。


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 大阪府内の10地区における取引価格等の市況のトレンドを示したものが下記の【表8】です。ここでは、A.取引価格:対象地区の不動産(土地又は土地・建物の複合不動産の土地に相当する部分)の取引価格、B.取引利回り:対象地区の不動産(土地又は土地・建物の複合不動産)の取引に関する利回り(純収益を取引価格で除した値)、C.オフィス賃料:商業系地区におけるオフィス賃料、D.店舗賃料:商業系地区における店舗賃料、E.マンション分譲価格:住宅系地区における新築マンションの分譲価格、F.マンション賃料:住宅系地区における賃貸マンションの賃料の6項目がその対象です。
 A.取引価格は全ての地区で上昇傾向を、B.取引利回りは1地区を除いて低下傾向を示しています。次に、C.オフィス賃料については、対象外の3地区を除いた7地区においてその全てが横ばい傾向を、D.店舗賃料についても対象は7地区で、その全てが上昇傾向を示し、オフィス賃料と店舗賃料の違いが表れています。一方、E.マンション分譲価格は対象となる3地区全てで上昇を、F.マンション賃料も対象の3地区全てで上昇傾向を示しています。


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5 その他の地価LOOKレポートの特長

 この主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)は今年で約20年間継続されています。また、同レポートには、担当した不動産鑑定士のコメントが地価動向として追記されていることから、既存の公的評価とは異なり、取引現場の状況を反映した定性的な観点での動向が分かり易くなっていることが特長として挙げられます。なお、これらはインターネットで公開されており、不動産事業に関わる方々のみならず、広く一般の人々も閲覧可能です。
 さらに、このレポートは、限定された地区ではあるものの特に高度利用地に焦点を絞っていること、地価公示や地価調査等に比べて発表までの期間が短いこと、四半期毎という頻度で公表されることなどから、これまで以上に高度利用地に関しての地価動向をいち早く把握することが可能です。

 (参考資料)
  国土交通省HP 土地水資源局 地価調査課 発表資料より

以上

(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン令和7年1月号執筆分