令和7年度税制改正(住宅・不動産関連税制)


税理士 石原 慎一郎


T 令和7年度税制改正のポイント

 令和7年度税制改正は、いわゆる「年収の壁」を理由とする働き控え、人手不足の解消が大きなテーマでした。そこで、所得税のかからない範囲を拡大するため、基礎控除や給与所得控除の引き上げや、大学生世代の子を扶養している親の税負担を軽減するため特定親族特別控除が創設されました。
 一方、住宅・不動産関連税制においては、土地や建築資材、人件費の高騰、住宅ローン金利の上昇といった不動産市場を取り巻く変化がある中、子育て世帯や若者夫婦世帯の住宅取得が難しくなることへの支援策としての住宅ローン減税や、既存住宅への特定の改修工事について費用の一部が所得税から控除される住宅リフォーム税制の拡充が、令和7年以降も引き続き実施することとなりました。
 建築資材の高騰が落ち着かない状況で中古住宅市場はこれまで以上に注目されることが予測されます。中古住宅の住宅ローン控除の要件を緩和する等、市場活性化のため時代に即した税制が求められます。

U 住宅・不動産関連税制の主な改正点等

1 住宅ローン減税の一部拡大・緩和
(1)借入限度額の上乗せ
 子育て世帯等を対象とした支援措置として、認定住宅等の新築等をして、令和7年12月31日までに居住の用に供したときは、その住宅の環境性能等に応じて住宅ローン控除の対象借入限度額の上乗せ措置を延長します。中古物件を取得した場合には適用がありません。

 (子育て世帯等)
  ○ 子育て世帯 :19歳未満の子を有する世帯(年齢の判定は令和7年
           12月31日現在とします。以下同じ)
  ○ 若者夫婦世帯:夫婦のいずれかが40歳未満の世帯

(2)床面積要件の緩和
 認定住宅等の新築(令和7年12月31日以前に建築確認を受けた家屋)又は認定住宅等で建築後使用されたことがないものの床面積要件については、合計所得金額1,000万円以下の者に限り40u以上に引き下げて緩和します。

2 住宅リフォーム減税の延長
(1)既存住宅の子育て対応リフォームに係る所得税の特例措置の適用期限
   延長

 子育て世帯等が、子育てに対応した住宅へのリフォームを行う場合に、令和7年12月31日までに居住の用に供したときに限り、対象工事の標準的な費用の額の10%等控除が、令和7年12月31日まで延長されます。

【参考】これにより、令和7年12月31日まで適用できる既存住宅のリフォー
    ムに関する特例措置は以下となります。
   ○ バリアフリー改修工事(高齢者等居住改修工事)
   ○ 省エネ改修工事(一般断熱改修工事)
   ○ 三世代同居改修工事(多世帯同居改修工事)
   ○ 耐久性向上改修工事
   ○ 子育て対応リフォーム(子育て対応改修工事)
   ○ 耐震改修工事

(2)既存住宅及びその敷地に係る買取再販の不動産取得税の特例措置の
   延長

 宅地建物取引業者による買取再販で扱われる住宅・敷地のうち、住宅性能の一定の質の向上を図るためのリフォーム改修工事を行った後、住宅を個人の自己居住用の住宅として譲渡する場合には、不動産取得税を減額する措置が、令和9年3月31日まで2年間延長されます。

V 令和6年からの延長分

(1)住宅取得等資金に係る贈与の非課税措置の延長
 特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置等の適用期限は延長されています。

@ 1,000万円までの上乗せ措置となる「省エネ等住宅」の省エネ等基準が、
  令和6年1月1日以後の贈与からは、断熱等性能等級5以上かつ一次エネ
  ルギー消費量等級6以上であることに引き上げられ、適用期限は、令和8
  年12月31日まで延長されています。
A 60歳未満の直系尊属である贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場
  合の相続時精算課税制度の特例措置の適用期限は、令和8年12月31日ま   で延長されています。

(2)特定の居住用財産の買換え等の特例措置の延長
 譲渡益に対する課税の繰り延べについて、特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例は、適用期限が、令和7年12月31日まで延長されています。

(3)居住用財産の買換え等に係る特例措置の延長
 譲渡損失の損益通算や繰越控除について、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等、特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等は、適用期限が、令和7年12月31日まで延長されています。

(4)認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除の延長
 認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除について、合計所得金額要件を 2,000 万円以下に引き下げた上で、適用期限は、令和7年12月31日まで延長されています。なお、住宅ローン控除との重複適用はできません。

(5)新築住宅等の固定資産税減額措置の延長
 新築住宅、新築の認定長期優良住宅に係る固定資産税の減額措置の適用期限、耐震改修等を行った一定の住宅に係る固定資産税の減額措置の適用期限は、令和8年3月31日まで延長されています。

(6)登録免許税の軽減措置の延長
 一般住宅に係る所有権の保存登記若しくは移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記、特定認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅に係る所有権の保存登記等、特定増改築等がされた住宅に係る所有権の移転登記について、登録免許税の税率軽減措置の適用期限は、令和9年3月31日まで延長されています。

(7)不動産の譲渡に関する印紙税の軽減措置の延長
 不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限は、令和9年3月31日まで延長されています。

(8)土地に係る固定資産税の負担調整措置等の延長
 商業地等及び住宅用地について、負担水準に応じて当年度の課税標準額を調整する負担調整措置、市町村が条例により課税標準額の上限を決定することができる条例減額制度、地価下落に対応する固定資産税評価額の下落修正措置の仕組みが、令和6年度から令和8年度までの間、継続されています。

W 以上が、令和7年度税制改正と、令和6年度税制改正で延長等され令和7年に関連する不動産関連税制の主な項目となります。
 本年度も延長が多かったと思いますが、税制の適用にあたっては、適用要件、適用開始時期、適用期日等を法令等でご確認いただき、誤ったご理解とならないようご注意ください。

(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン令和7年6月号執筆分