住宅ローン控除制度について


税理士 船 橋  充


1.はじめに

 個人が住宅ローン等を利用して、いわゆるマイホームを取得等した場合において、一定の要件を満たすときは、その年分の所得税額から一定金額を控除することができます。
 令和5年度の税制改正では住宅ローン控除に関する改正はなく、令和4年度の税制改正で大きな改正がありました。この改正により、令和5年や令和6年に居住を開始した場合にも影響がありますので、本号で改めて確認することとします。なお、税制改正の詳細な内容については、メールマガジン第244号(令和4年(2023年)7月15日号「税理士 西田 和生先生「住宅ローン控除制度について〜控除率、借入限度額の見直し〜」)(https://www.otc.or.jp/pages/mmg/m2207_2.html)にて紹介されていますので、併せて確認をお願いします。

2.住宅ローン控除とは

(1)住宅ローン控除の内容
 個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築や取得、増改築等をした場合、毎年の住宅ローンの年末残高に一定の割合を乗じて算出された金額を、その年分の所得税額等から控除することができます。しかし、毎年永続的に控除できるわけではなく、控除することができる期間(控除期間)が決まっています。これについては改正がありましたので、下記「3.主な改正内容」の項目で紹介しています。更に、住宅ローン等を利用してマイホームの取得等をしていても住宅ローン控除の適用を受けられない場合もあります。これについては、次の「(2)適用を受けるための制限」の項目で確認をすることとします。

(2)適用を受けるための制限
 ここでは住宅ローン控除の適用を受けられない場合について、主な2点を紹介します。この他、住宅ローン控除を受けるための要件が細かく規定されていますので、上述のメールマガジン第244号(https://www.otc.or.jp/pages/mmg/m2207_2.html)も併せて確認してください。

 @所得に関する制限
 住宅ローン控除は、その年分の合計所得金額が一定金額以下でなければ適用を受けることができません。具体的には、令和4年度の税制改正において、その年分の合計所得金額が2,000万円以下となりました。従前は3,000万円以下とされていましたので、変更点に留意ください。

 A面積に関する制限
 住宅ローン控除は、住宅ローン等を利用してマイホームを取得等すれば無条件で適用を受けられる訳ではありません。上記@の様に、その年分の合計所得金額が2,000万円以下であることの他、原則として、取得等されたマイホームの床面積が50u以上でなければなりません。

3.主な改正内容

 令和4年度の税制改正において以下の改正が行われています。本改正は、会計検査院からの指摘への対応とされています。会計検査院からは、住宅ローンの借入金利が住宅ローン控除の控除率(改正前1%)を下回る場合、支払った住宅ローンの利息よりも控除される所得税額の方が多額になると指摘しています。住宅ローン控除の控除率が1%とされた昭和61年の融資基準金利は5.25%であり、フラット35が導入された平成20年4月時点の金利は2.64%〜3.20%、令和元年8月時点では1.17%〜1.87%であるとまとめています。このことから会計検査院は、1%以下の金利で住宅ローンを借り入れている者も多くいるのではないかと指摘しています。実際に会計検査院が抽出調査をしたところ、住宅ローン控除の適用を受けている者のうち、1%以下の金利で借り入れている者は全体の78.1%に及んでいると結論づけています。

(1)控除率について
 上述の会計検査院の指摘を受け、令和5年(2023年)から引き続いて、令和6年(2024年)においても控除率は0.7%とされています。すなわち、住宅ローンを利用して住宅の取得等をした場合、各年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税額等から控除することができます。

(2)控除期間について
 住宅ローン控除を受けられる期間(控除期間)は、10年間とされていましたが、上記(1)の通り控除率が0.7%に引き下げられたことを受け、控除期間は13年間とされました。


(3)借入限度額について
 住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高に控除率を乗じた額をその年分の所得税額から控除するものですが、住宅ローンの年末残高(借入額)には制限はないのでしょうか。つまり、住宅ローンの年末残高がいくらであっても、住宅ローン控除を受けることができるのでしょうか。この点、住宅ローンの年末残高についても限度額があります。ただし、限度額以上の住宅ローン残高がある場合、住宅ローン控除を全く受けられないという訳ではありません。限度額以上の住宅ローン残高がある場合には、限度額に控除率を乗じて住宅ローン控除額を計算します。具体的な限度額は、取得等される住宅によって2,000万円〜5,000万円となっています。
(詳細は、メールマガジン第244号(https://www.otc.or.jp/pages/mmg/m2207_2.html)を確認してください)。

(4)住民税からの控除について
 その年分の所得税額から住宅ローン控除額を控除した場合において、控除しきれなかった金額がある時は、一定金額を翌年の住民税額から控除することができます。例えば、年間の所得税額が15万円であるのに対し、住宅ローン控除の金額が20万円あるとすると、5万円が控除しきれない金額となります。この金額について、従前は課税総所得金額等の額に7%を乗じた額(上限額は136,500円)が住民税から控除することができるとされていましたが、課税総所得金額等の額に5%を乗じた額(上限額は97,500円)が住民税から控除することができる金額となるよう改正がなされています。

4.おわりに

 住宅ローン控除に関する規定は年々複雑になっています。例えば、マイホームの取得等の違いにより、特定取得・特別特定取得・特例特別特例取得・特別特例取得といった用語も出てきます。どれに該当するかは、個別の事情をよく確認して判断しなければなりません。マイホームという大きな買い物ですから、後々トラブルにならないよう専門家のアドバイスを仰ぐことをお勧めいたします。

以上

(一財)大阪府宅地建物取引士センターメールマガジン令和5年10月号執筆分